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V.S 15
僕は舌打ちした。
奴らの会話は下の階に降りた時に仕掛けた盗聴器で聴ける。
盗聴器はまだ見つかってはいない。
イアホンから聞こえる会話は喜ばしいモノではなかった。
呼吸を読んでいることに気づかれた。
僕は呼吸に合わせて動くことで、奴らの視界の死角から入りこみ、逃げる。
いつ目蓋を閉じ、いつ動くのかをわかっていて、コートを使ったトリックのように視線を誘導できれば、姿をけしたり現れたりするように見せられることはそれ程難しくない。
そうか。
グール共は呼吸が要らないのか。
それは想定外だった。
そして、思った以上に「ダルマ」は賢い。
何もしない「パジャマ」とは雲泥の差だ。
罠を仕掛けてきやがった。
この僕相手に。
あのグール達が自分を囮にしていたことに気付くべきだった。
ダルマもガキ相手に自分を囮にしたんだから、他の奴らもやるかもという考えにいたらなかったのは僕の甘さだ。
向こうも命懸けなのだ。
自分達の身体を犠牲にし、首だけを残すことだけを考えて攻撃してくる。
でも実際、連中をただ殺すだけならそんなに難しくはないんだ。
ただ・・・人質を犠牲にしないで、となるとかなり難しくなる。
正直、人質なんてどうでもいいし、なんならグール共を殺しながら人間を刻んでもいい位の気持ちなんだが。
でも。
ダメ。
ガキが悲しむだろ。
ガキが自分のせいだと悩むだろ。
自分が「迷子」を殺せなかったせいだと、自分の友達を殺せなかったせいだと。
・・・殺して欲しかったよ。
本当に。
僕だけのために。
でも、お前には無理。
仕方ない。
だから、お前がそんなことを思って、一生殺せなかった友達に捕らわれたりなんかさせない。
僕が殺したお前が惹かれた人間達の一人にしか、迷子の位置はない。
「殺せなかった」そう思って苦しみ、ソイツを思い忘れられなくなるなんて許さない。
お前が寝ても覚めても、囚われるのは僕だけでいい。
さて、人質を守らないと。
殺してしまって、ガキの心を少しでも誰かに奪われるなんて許せない。
ガキは僕のものなのだ。
僕は耳を澄ます。
足音を拾う。
呼吸程ではないが、足音でもかなりの情報は得られる。
体重が90キロはあり、おそらく身長が180センチを超える男が歩く音が、人質がいる部屋へ向かっていく。
その位の身長と体重があるのは「迷子」だろう。
「ダルマ」は仲間の中でも「迷子」を一番信用している。
何度も「パジャマ」の話に出てきた「彼女」の存在が気になるが、今は「迷子」がどう動くのかが一番大事だ。
僕は血まみれで穴だらけの自分の服を見回す。
これでは、な。
奴らは臭いで僕の存在をすぐに見つけるだろう。
奴らにどれだけ気付かれずに近寄れるか。
服を脱ぎ捨て、血を洗い落とす時間などない。
さて、と。
それでも僕は人質を守るために奴らに近付かないといけない。
どうするか。
もう時間はないのだ。
ドアが開く音がした。
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