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第18話
(啓司が、見てる……)
その事に、喜びを見いだしそうになる。
蓮は顔を枕に埋める。くぐもった喘ぎ声が、部屋を響かせる。雨だれのような、美しいピアノの音と、生々しい喘ぎ声の、ミスマッチさが酷かった。
「それ……」
おずおずと、啓司が口を開く。
「んっ……なに?」
「……俺が、見たいって言ったから……、してくれてる……んだよね……」
啓司の顔を見やると、顔は赤かった。少し、前屈みになっている。蓮の痴態を見て、反応してしまったらしい。
「……鍵、閉めてきて」
蓮が指示すると、啓司はおとなしくそれに従う。少し、可愛いかった。
「啓司も……すれば? ……口で、手伝ってあげる」
自分で後ろを弄りながら、口は啓司のモノをくわえる……と思ったら、途端に興奮した。大胆な発言だとは思ったが、止められない。もっと、知らない快楽を味わいたい。
啓司は、少し躊躇ったようだが、ベッドに上がった。
二人分の体重に、スプリングが悲鳴を上げる。
一度、奥を弄るのを止めて、啓司を横たわらせて、股間に顔を埋める。そこは、もう、十分興奮していた。
下着とズボンを引きずり下ろして、啓司の剛直をさらけ出す。
「……興奮、してる」
舌先を伸ばして、つん、突くと啓司の体がびくっと震えた。
「そ、りゃ……さっきの、蓮が……その、いやらしすぎて……」
「ふうん? ……僕をみて、興奮したんだ……。僕はアナニーしてるヘンタイだけど……それを見て興奮してる啓司も、相当ヘンタイだよ」
蓮は、ふふっと笑う。啓司の顔が、いっそう赤くなった。
啓司の性器を口の奥まで飲み込む。熱くて、質量のある器官で口いっぱいが満たされる。臀部を突き出して、また、後ろに指を入れ始める。口と、奥と、同時に刺激され、あっという間に達しそうになる。
「っ、……っんっんっ……っ」
喉の奥の方まで、顔を動かして出しいれをするたび、口を無理矢理犯されているような、背徳感がある。
「っ、……っっぁっっ、あっ……ちょっ、れ……っん……っ」
「っん……おっき……。啓司の、すごい、おっき……。あ、口、すご……っ」
「……蓮が、してるのが、見えない……」
啓司が、意外な苦情を口に出す。
「えっ……っ?」
「今日は、蓮が……してるの……見たかったのに……お尻……こっちに向けてよ」
それは、恥ずかしすぎる。体が、かーっと、燃えるように熱くなった。
「は、ずかしい……」
至近距離で見られるのは、さすがに恥ずかしい。
「俺だって……、それ、恥ずかしいけど……?」
口でされるのが、恥ずかしい、ということなのだろう。
仕方がなく、啓司の体をまたぐような格好で、尻を、啓司の目の前に突き出す。
「こ、これで良い?」
恥ずかしすぎて、気が遠くなりそうだったが、「うん」と満足げな啓司の声が聞こえたので、よりいっそう熱く脈打つ、啓司の性器の根元から、先端まで、ゆっくりと舐め上げる。
「っ……っちょっ……っあ……それっ……っ」
啓司の内腿が、びくっと震えるが、蓮は、その根元をしっかり握っている。
「ダメ……、まだイかないでよ……」
蓮は先端をチロチロと舐めながら、言う。充血した、先端は、張り詰めて、今にもはじけそうだった。
「ちょっと……、蓮っ……っ」
「顔と、口……、啓司、どっちが好き……?」
「っ……その……っ、見えないなら……顔は、意味……ないだろ」
「じゃ、一回、手の中にして」
手で、啓司のそれを扱うと、程なく、蓮の手のひらの中に、どろりとした白濁が溢れた。
「あっ……っ……っ」
蓮はそれを手に取って、自分の臀部を両手で広げ、奥まった入り口に塗り込めた。
「っ……っ」
啓司が、息を飲むのが解った。
「凄い……嫌らしい……。入り口……ひくひくしてる」
啓司が実況するのを聞きながら、蓮はゆっくりと指を二本、そこへ沈めていく。
「あー……っ……っ」
見られているのも相まって、快感が強い。一度弄っているから、感度も上がっているし、啓司の精液を塗り込めているという状況もあって、蓮は顎を上げて大きくあえいだ。
「すごい……指の根元まで、すんなり入った……」
「……い、わない……で……」
体が熱い。汗で濡れているのが解る。上半身の服が、肌に張り付いて気持ちが悪い。
「いや、だって……本当に、……いやらしくて……綺麗」
「えっ?」
思い掛けない言葉を聞いて、蓮は狼狽える。いやらしい、は理解出来るが、綺麗というのは、違う気がした。
「だって……なんだろう、少し、中が見えるんだけど……凄く、綺麗な色……」
うっとりと、啓司が呟く。
じっと見られている。しかも、そこへ、指を出し入れしているのだ。どうしようもない。
「あっ……っも、見ない、で……っ」
喘ぎながら、蓮は、そっと啓司の性器に頬刷りした。すでに硬度を取り戻して、雄々しく屹立している。
「……啓司」
「なに?」
「……啓司も、また、勃ってきた」
「言うなよ……蓮が、いやらしすぎるんだろ……」
「また、出して……」
そう言って、蓮は、体を起こして、一度離れる。啓司のほうへ向けていた尻を、今度は、天を仰ぐ、啓司の器官の真上に向ける。
先端を、入り口にあてがう。
「っ……っんんっん……っ」
指とは違う。自分の体温とは違う、熱い器官の感触に、くらりとする。
「ちょっ……っ蓮っ……っ」
「口でするのと、大差ないよ……ちょっと、キツいかも知れないけど……」
ゆっくりと、蓮は、啓司を体に沈めていく。上手く入るかどうか解らなかった。指とは、あからさまに容積が違う。ぬめりを帯びたそこは、つるりと滑る感じがする。両手で臀部をひらいて、そこへ、ゆっくりと、導く。狭い入り口を、めりめりと広げながら、入ってくる、のが解る。
「あっ、……っ、あっ……おっきい……っ」
「ちょっと……蓮、ムリは……っ」
「……ん? イヤ。欲しいの……これ……」
思わず、素直に、欲しいと口走ってしまったことに、羞恥が募る。初めて受け入れるのに、自分で入れるのはムリかも知れないと思いつつ、張り出したカリの部分を抜けると、ぬるんっと一気に入った。
「っ――――っ!!!」
一気に、ものすごい容積に貫かれて、声なき悲鳴のような喘ぎが漏れる。
「っ……すご……暖かいし……、キツ……、もうちょっと、締めないで……苦し……」
「あ、ど、どうして良いか、わからな……っ」
体の奥に、熱い楔の感触がある。それは、どくどく、体の中で脈打っている。どうして良いか解らずに、一度少し抜こう、と腰を浮かせる。内壁が強く擦られて、膝が震えた。
「ひっ……っあっ、あっ……っんっ……っ」
あまりにも感じてしまって、体から力が抜ける。こうして、出し入れをすれば、啓司も気持ちが良いはずだし、蓮も、気持ちが良い。
それに気がついて、無我夢中で、蓮は動く。
自分の指とは、全く異なった感触だった。
熱くて、熱くて、固くて、強烈な感覚だった。体の奥、そこを、余すことなく満たされているという、精神的な充足感もある。
「あっ……っん、も、だめ……っ、きもち……い……」
「蓮、……俺も、ちょっと、も……。抜いて……」
「ん……良いから、奥にちょうだい……」
奥に。そうすると、体に負担が掛かるというのは聞いた。けれど、今は、奥に啓司の精を受けてみたかった。
そういえば、コンドームも付けていない。あとで、ちゃんと、ケアして貰わないと……などと、現実的な事を考える。快楽に呑まれるのと、裏腹に妙に現実的な意識と、バラバラに存在しているような、奇妙な感じだった。
「啓司……っ」
より早く、無我夢中になって、蓮は、腰を動かす。
啓司が、動こうとしたとき「ダメ」と蓮は制止した。
「なんで……俺も、動きたい……んだけど」
何故。
だって、コレは、セックスじゃないから。蓮は、ふふっと笑う。
「僕が……、啓司の……これを使って、アナニーしてるだけだから」
啓司の顔が、歪む。変な事を言っているのだろう。だが、気持ちも通わないのに、『性行為』はしたくなかった。
「……口でしてるのと、一緒……っん……っ、啓司の、好きな方でするけど。手と、口と、後ろと……何が好み……?」
愉快な気分だった。
主導権を、ずっと握っているというのが、気分がいい。
これは、命じられてされているわけではない、というのを絶対に貫きたい。
少しの間、啓司は、黙っていた。けれど、顔は真っ赤で、時折、甘い声が漏れる。快楽に耐えるような姿を見下ろすのも、悪くない気分だった。
そして、やがて、啓司は観念したように呟いた。
「……うしろ……」
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