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第21話
特別食堂がある、特別な建屋に運び込まれたときには、肩に担がれたままだった。
「飛鳥井様、お待ちしておりました。二階の『鏡の間』にお席をご用意しておりますが……お連れ様の体調が優れないようであれば、なにか、お手伝い致しますか?」
メートル・ドテルが恭しく問いかけるが、この状況で、良く暢気な事を、と蓮は苛立つ。完全に拉致だが、それを咎めもしないことに腹が立ちつつ、ここに、蓮の味方がいないと言う事実を思い知る。
「『鏡の間』は、きっと、鳩ヶ谷くんも気に入ると思うよ」
ベルサイユ宮殿だったか。黄金と鏡に彩られた、華やかな回廊だったという記憶はある。が、実物は見たことがない。
担がれたまま二階へ運ばれ、そのまま部屋へ連れ込まれる。鍵が掛けられたのが解った。
部屋は、まず、控え室があって、そこには、ソファや長椅子が置かれている。食堂は、ドアの向こうらしい。
部屋の片隅には、装飾が施された美しいピアノもあった。
蓮は無造作に長椅子の上に放り出された。
クッションが効いた、柔らかな座面だったが、一瞬、息が詰まった。
「っ……っ!」
両側から、取り巻きたちに手をおさえつけられる。
「……っ飛鳥井っ!」
蓮の声を聞いた飛鳥井が、薄く笑う。
「良い眺めだね。……こういうの、僕は、保存しておきたいタチなんだよね」
スマートフォンを取りだして、撮影を始める。ぞっとした。
「まあ、お互い、楽しめばいいだろ……どうせ、鷲尾に毎日ご奉仕してるんだろ? ……だったら、僕たちにもしてくれよ」
悪いようにはしないからさ。
頬を、舐められた。生暖かい舌が、這っていく感触に、肌が粟立つ。
「やっ……めろっ……っ!」
脚で飛鳥井を蹴り飛ばしてやろうかと思ったら、その脚を逆に捕らえられた。
「なんだよ、急かすなよ……まあ、いいか……。鳩ヶ谷くんは……鷲尾くんの『専属』なんだろ? 三人から同時に責められるの、なかなか、良いと思うよ」
にやり、と飛鳥井が笑う。取り巻きたちからも、くすくすと笑い声が漏れた。
「……飛鳥井くんは、他にも、こういうことしてるの?」
「えー? なんで、そんなこと気になるかな」
飛鳥井の顔が近付いてくる。そのまま、キスをされて、嫌悪感に目眩がした。
「なんだよ、意外に慣れてないんだな。鷲尾くん、ちゃんと仕込んでおけよ」
「っ……っわ、鷲尾くんと……キスなんか、したことないし……、セックスだって……したことないよ」
顔が、屈辱と羞恥で熱い。蓮が必死の思いで、そう口にすると、飛鳥井が目を丸くした。
「へぇ~、じゃ、バージンなんだ……それは貴重だ。まあ、最初は痛いかも知れないけど。すぐ良くなるよ」
優しくしてやるから、と飛鳥井が笑う。
制服のシャツの、ボタンがはずされて、裸の胸があらわになる。少し、ひんやりした外気を感じた。
「っ……っ」
飛鳥井の手が、胸を這っていく。
「……乳首、勃ってるし……鳩ヶ谷くん、鷲尾くんに、乳首とか触って貰ったことないんだ?」
「な、ないよっ……っん……、飛鳥井、くんも……やめ……」
「なんで~? こんなに、可愛く立ってるのに、ほら。可愛いピンク色。こんなの、触って~って言ってるみたいじゃない。鳩ヶ谷くんの体が、触って欲しいって言うから、僕は触ってあげてるんだよ。なあ」
取り巻きたちに同意を求めると、「そうそう。せっかくだから触って貰えよ」と適当な相づちが打たれる。
「っ……っあっ」
「感度も良好。……鳩ヶ谷くん、鷲尾くんにも、触って欲しかったんだろ……?」
こんなふうに、さあ。と言いながら、飛鳥井が、乳首を舌で舐る。
「んっ、んんっ……っぁっ……っや……っ」
自分の指の感触しか知らなかったそこを、舌でされると、全く違う感覚があった。粘膜そのもので、ねっとりと舐られる感触はあまりにも淫靡で、目の前が、くらりと傾ぐ。
「気持ちよさそうじゃないか……嘘つきだなあ、鳩ヶ谷くんは」
飛鳥井が、笑いながら、乳首を思い切りつねる。
「―――っ……っ!!」
体の芯を鋭い感覚が貫く。喉がのけぞった。
「……こんなに感じてるのに……こっちも、もう、反応してるじゃないか」
さわさわと、飛鳥井の手が、蓮の中心を探る。嫌悪感に寒気がしたのに、裏腹に、そこは、反応してしまっている。
「っ……っやっ……っ」
「いやらしい顔だな……ちゃんと、撮ってるから、安心しろよ……これ、拡散されたくないだろ? 鷲尾くんに見られたら、まずいんじゃないの?」
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