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#8 僕は初めて

「うーん……」  僕は部屋で1人、クレオの(彼曰く)神から聞いた言葉を思い出していた。  5人の人物って──今一番関わりのあるカノキ、シオン王子とヤナギさん、そしてクレオさん、なのかな。  だとすると、後1人は誰だろう?  1人物思いにふけっていると、なにやら隣の部屋が騒がしい。 《へぇ、あんたユルユルじゃん。いつもヤってんの? あ?1人で? 変態かよ、んっ》 「カノキっ……! 聞こえてるから!」  僕は隣の壁に向かって叫ぶが、無視される。また誰かを連れ込んでるみたいだ。  規則正しく鳴る弾けるような音、大きく喘ぐ声……これじゃ集中出来ない──!  最近、ずっとこんな感じだ。  シオン王子に、「今後君をどうするか決まるまで、部屋から出ないように」と言われているから、僕は部屋を出ることが出来ない。そしてまだ僕の監視の役目があるカノキの部屋は隣にある。 ──とにかく、この世界は〝性〟に対してユルすぎる。  しかも男同士……。  僕はいまだに、理解することが出来ない。   ため息をついていると、突然ノックもなく部屋のドアが開けられた。 「シオン王子……!」 「ミコト、調子はいかがかな」 「一応元気です……」 《はー、やば、きもちっ》パンパンっ  隣の部屋から聞こえるカノキの声に、シオンは顔をしかめた。 「カノキ、ヤるならもう少し静かになさい!」 《ぅわ! ご主人様……! 失礼いたしました……》  すぐに静かになる。シオンはとても不愉快そうに咳払いをした。 「長い間、部屋に閉じ込めてしまってすまないね。今日は君が寂しいと思って来たんだ」  シオンの手が伸びて、僕の髪を一束すくい、口付ける……。 (なんかまた、キラキラお花背景が見えたような──)  一連の動作がとても自然で、美しい。  しばらく呆気に取られたように動けない僕を見て、シオンは自分の胸元をキュ。と掴んだ。 「逃げないのかい」 「………」  僕は何か言おうと口を動かすが、声にならない。心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる気がする。 「逃げないのなら、受け入れてくれるねっ──」 「んっ──!!!」 ────!  なんだ、これ  キス、された。 「ぁっ」  〝キス〟された──!!!!!  急いで離れようと動かした両手を、ガッチリと掴まれる。座っていた椅子に押し付けられ、足と足の間に、シオンの片膝が滑り込む。 「んっ……んっ……!」  非力な僕は、抵抗できない。されるがままに何度も口づけを繰り返される。  体が、熱い。力が、抜けていく……。 「ミコト、まだ舌もイれてないのに、感じちゃってる?」 「はぁ……んっ──」 「もっとしたい?」  ジタバタと暴れる僕を容易く捕まえて、唇も離しきらないまま至近距離で言われる。 「なんでっ、はぁっ……!」  心臓の鼓動が早くなっていく。  シオンの片手が僕の襟元を掴んだ。 「初めては私が、貰ってあげるよ」 「ちょっと待っ……」  固まる僕の服をいとも簡単に脱がされ、上半身が露わになる。 「かわいいね……」  僕は抱きしめられ、ちゅ。と首筋に唇を当てられた。 「〜〜〜っ!」  今までに感じたことのない、ゾワゾウとした感触に、僕は思わず身体を震わせる。 「……怖い?」  耳元で囁かれ、僕は首を縦に何度も振る。 「本当に、シた事がないんだね……君に出会った時から、胸が締め付けられて苦しいんだ。ドキドキして……君を欲しくなる。なんでだろうね」  節目がちに切ない目に見つめられ、僕は思わず視線を逸らす。  シオンの整った顔は間近で見るには綺麗過ぎて耐えられない。 「大丈夫、優しくするから、力を抜いて」  シオンの口付けが徐々に深くなっていく。  クチュ、クチュ。と舌が絡めさせる音が部屋に響く。 「やめ……はぁ……」  初めての感覚に、僕の脳みそが麻痺したようにほわほわと思考できなくなってくる。  身体が、熱い──。 「ミコトのココは、どう感じる……?」  シオンは僕のズボンを脱がせると、下着の上から指でゆっくりと僕の……それをなぞる。 「んっ……!」  ビクッと僕の身体が小さく跳ねる。  感じたことのない感覚が、全身に伝わる。 「ココも……」  シオンは僕の下着の中にするりと手を入れ、穴……の方を軽くつつく。 「あっ、やめっ、やめてくだ……あっ」  いつの間にか何かの液体でしっとりと濡れたシオンの指が、僕の穴に少しずつ入っていこうとする。 「ふー、きっついね。本当に初めてなんだね」 「いたっ……くっ、ううっ……」  シオンはせめる指を止めてくれない。  ゆっくりと僕の穴の中を支配するようにかき混ぜてくる。 「痛いのは最初だけだからね。大丈夫……んっ」  痛い痛いと喚く僕の唇を、シオンの唇で塞がれる。 「んっ……ほら、力抜いて……まだ指1本しか挿れてないから」  僕の下半身でくちゅくちゅと音がする。  こみあげるような熱い感触で、脳がフラフラする。 「はっ……」  シオンは僕の顔を見て、我に返ったように目を開いた。 「泣いてるのかい……?」  僕は気付かないうちに、目にいっぱいの涙を溜めていた。つーっと頬を伝わる涙を、シオンが指でぬぐう。 「……っごめん」  シオンは耳元で小さく言うと、僕の肩に頭を乗せた──。 ── ─ ─ 「くっ……はぁっ、ずるっ、俺だって、結構我慢してたのに」  カノキは部屋で1人、肩で荒く息をしていた。(捕まえてヤってた兵士は逃げた) ミコトの部屋側の壁にもたれかかる。耳を近づけば、隣の部屋の小さな音でもよく聞こえる。 「……ちっ、くそっ」  隣から聞こえてきたミコトの声や淫乱な音が、頭の中でぐるぐると何度も再生される。 (なんで惹かれるんだろ、アイツに、ミコトに……)  1人でヤるとか、情けな、俺──  カノキはふっと自嘲気味に笑った。

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