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#9 心の穴を埋めるもの

 静かな部屋に響く振動音。 「うっ、くっ……」  暗がりの中ベッドの上で、全裸で四つん這いになった男が、頬を赤く染め上げ、ビクビクと震えている。  カチッ──  スイッチが切り替わる音がして、振動音は更に大きく激しくなる。 「んぁっ、待っ……あっ……!」 「まだ5段階のうちの2つ目ですよ、〝ヤナギさん〟」  クチュ……  クレオは角度を変えながら、ヤナギのナカに入っている太くて振動しているものを動かす。とても慣れた手つきで、的確にヤナギのナカを犯していく。 「どうですか……きもちいい?」 「はい……うっ」 「イイ顔見せてください」  クレオはヤナギのナカにディルドを入れたまま、仰向けにさせる。そしてカチッとまたスイッチを一段階上げる。  ヴーヴヴヴヴ…… ゥイーン……  クレオは片手で震えるディルドを動かしながら、そばにあったローターをヤナギの乳首に当てる。 「んっ……あぁっ……!!」 「イイ顔、イイ声……」  うっとりとしたようなクレオの声。  クレオはディルドから手を離し、ヤナギの勃ったそれをねっとりとしごく。 「はぁっ……ぅあ……う……」  ヤナギの喘ぐ声が一段と大きくなる。身体はビクビクと震え、何度か背中が大きく弓なりに跳ねる。 「しっかりと咥え込まないと、抜けてしまいますよ」  時折抜けそうになるディルドを奥まで差し込んであげると、ヤナギが「あっ!」大きく声を出す。クレオはディルドの振動スイッチを最大にした。 「っくはっ、出るっ、うっ──!!」 ── ─ ─ 「本当によくわからない人ですよね、君は」  ヤナギが服を着ている後ろから、クレオは声をかける。 「そんなにヤるのが好きなら、シオン王子とすれば良いのに……彼なら喜んでするでしょう?」 「私は……あくまでただの従者ですから。王子から命令されない限りは、しません」  さっきの乱れた様子が嘘のように、冷静に答えるヤナギ。 「それは……シオン王子が他の人の元へ行ってしまっても、同じことが言えるのですか?」 「……私はまだ仕事が残っているので、失礼いたします」 「答えてくれないのですね……この余韻に浸る時間もないのですか?」  何かの液が滴るディルドを持って、にっこりと微笑むクレオ。ヤナギは全く見ていない。 「貴方は人に新しい玩具を試してみたい。私は性欲を解消したい。そういう利害の一致での関係にすぎません。そういう話でしたよね、天使様」 「ほんと、終わった後の君は、まっったく面白くないですね」 「なんとでも言ってください。それに貴方はいつも通り、この後1人でヤるのでしょう。私は早めに失礼させていただきます」  そう言われ、ふっとクレオの表情が変わる。ヤナギには気づかれていない。 「……まぁ、そうですね」 「天使様、それでは」  ヤナギはクレオの横を素通ると、部屋を出て行った。 「全く……危うい人ですね。真面目すぎて、ますます放って置けないです」  メガネを通して見える曇った景色を見ながら、クレオは小さくつぶやいた。

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