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#10 伝わらない想い

「はぁー……」  仕事の手を止め、シオンはため息をついた。 「先程、ミコトに今後の事を話してきたのではないですか? 元気が無さそうに見えますが」 「僕は落ち込んでるの! 心配くらいしてよヤナギ」 「……シオン様、その話し方は今は……」 「いいの、もうどうでもいい! 抱きしめて慰めてよ」  シオンはヤナギに向けて、腕を広げる。 「それは、命令ですか?」  そんなシオン見るヤナギの声は冷たい。 「ミコトと……なんかあったって思ってるでしょ、ヤナギのばか」 「っ、シオン様……」  バサッ  シオンがヤナギに抱きついた。 「あったよ」  低い声で、シオンは言う。 「カノキに聞いてみなよ、あの子隣の部屋で聞いてたと思うから」  ──ねぇ、ヤキモチ妬いてよ。僕のことを考えて、頭の中僕でいっぱいにして 「………」  シオンの思惑通り、黙ってしまったヤナギに、シオンは少し嬉しげに言った。 「ヤナギ、ミコトに今後のことを伝えに行ってくれ。アルムも紹介するのを忘れずに。……ふふっ、これは命令」 「……かしこまりました」  ──律儀な人だ。  今日は面白いヤナギが見れたから、よしとしよう。  そんな事を思いながら、シオンは昔の事を思い出していた。 ── ─ ─  ヤナギとは自分が生まれた時から一緒に過ごしていた。  僕は代々王族の家系、ヤナギは代々その従者となる運命の家系。  ──僕たちは生まれた時から、運命が決まっている存在だった。  ヤナギは小さい時から真面目で、負けず嫌いだった。  僕は頑張るヤナギの姿をかっこいいと思っていた。僕も負けずと勉強や色々な訓練を頑張った。  やがて僕の王子としての立ち振る舞いと、ヤナギの従者としての風格が備わってきた。  僕はどこへ行くのも、ヤナギと一緒だった。常にそばに彼が立っていないと、ダメになった。  そんなある日……僕は見てしまった。 「んーヤナギ……さすがに寝てるかなぁ」  深夜、急に目覚めてしまって眠れなくなった僕は、暇に耐えきれずヤナギの部屋まで来ていた。 「ヤナギ……?」  部屋の灯りはついていた。耳をすませると、うめき声のような音が微かに聞こえる。僕はドアをそっと開けて中をのぞいた。 「あっ……」  そこにいたヤナギは……服を着ていなかった。 「もっ、申し訳ございません!」  すぐに気づいてシーツを体に巻き焦るヤナギに、僕はゆっくりと近づいた。  部屋の中がヤナギの匂いで充満している。こんなヤナギの顔、見た事ない。  ヤナギだけ、ずるい……僕はそう思った。 「僕とシてよ、ヤナギ」 「!……えっ? シオン様……」 「ヤナギ、〝命令〟だったら、僕とヤってくれる?」  僕は知っている、この悪魔の言葉を。 「シオン様……私をあまり困らせないでください。それに貴方はまだ──」 「したこと無いよ。それが何?」  ずっと想っていた。欲していた。こんなチャンス僕は逃さない。 「こんなヤナギ、見ちゃったら、僕もう我慢できないよ。ヤナギは僕を気持ちよくする方法、知ってそうだし」 「それは、まぁ……」  ──正直者め。  僕は気分が良かった。年上のヤナギには、何かと勝てることが少なかった。今、彼の弱みが目の前にある。 「僕と一緒にキモチ良くなろう、これは命令だからね」

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