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#13 人気者は辛いよ
「アルムさん! この件なんですけど……」
「アルムさん、この前言ってた話なのですが……」
──僕は、アルムの元で色々と教わりながら過ごしていた。
主に掃除や洗濯、料理などの雑用をしながら、空いた時間に王子の付き人として必要な知識、立ち振る舞いや言葉遣いを勉強したりもしている。
シオンにはしばらく会っていない。付き人というより、本当に使用人みたいな生活だ。
(アルムさん、今日も人気者だな……)
アルムは城全体の使用人たちを取りまとめていて、忙しい人なのに、毎日時間を見つけては僕を気にして会いに来てくれていた。
城の中を歩いているだけなのに、アルムを見かけた途端、皆寄ってきて色々と質問している。
「仕事が出来すぎる男っていうのも困るね〜」
使用人たちの質問全てにさらっと答え、僕の元へ戻ってくるアルムは、いつものニコニコ笑顔だ。
「凄いですね……」
僕が感心していると、
「あの! アルムさん!」
1人の執事服を着た男性が声をかけてきた。
「んー、何か用かい?」
アルムは品定めするように、執事服の男を上から下まで見る。
「今夜……空いてますか?」
男の顔は赤い、アルムに見られているだけなのに、じんわりと汗もかいている。
──この世界にいる期間もそれなりに長くなってきた僕は、このただならぬ雰囲気を嫌でも感じてしまった。
「へぇ……君、久しぶりのお誘いだね。もちろん良いよ〜」
アルムは使用人からよくモテる。誘いの声がかかることも多い。
僕の視線に気付いて、アルムがウインクしてくる。
「あれ、ミコトくん。君もしたかったかい?」
「〜〜〜したくないですっ!」
「可愛げがないね〜、でも……」
アルムは誘ってきた男に手を振って見送ると、僕の顎をくいっと持って顔を近づけた。
「君だったら誰よりも優先したいって、思っちゃうけどね」
「──!」
頬にちゅっ。とわざと音を立てて口付けするアルム。僕は急なことに体が固まって、思考停止。
「なんでだろうね。ほんと君を見てると、欲しくなっちゃうね」
どこか他人事のように呟くアルム。
「か、からかわないでくださいっ!」
やっと口のきけた僕に、アルムはただ優しく微笑むだけだった──。
「どう? ココでしょ? 気持ちいい?」
ここはアルム専用の執事室。1人で使うには広すぎる部屋の隅には、大きなソファと怪しげな玩具が散らばっていた。
ギシ……
アルムと今日誘ってきた執事の男の体重で、ソファが軋む音がする。
「あぁ、きもちいです……アルムさんっ……!」
細かく振動する細めのバイブを、角度を変えながら攻めるアルム。反応を見ながら「グリッ」と奥に当てると、男の喘ぐ声が悲鳴のように部屋に響いた。
「アルムさん……僕、アルムさんの欲しいですっ!」
「欲しいなら、おねだりしないと」
アルムは男の顎を乱暴に掴むと、噛み付くようにキスをする。
「んっ、ぷは、はっ……アルムさん……はぁ、おちんちん、入れてください……んっ、お願いしますっ……!!」
「……いいこだね」
もうすでに、ビクビクと身体を震わせている男の穴に、アルムはそそり立った自身のものをあてがった。
「優しくは出来なさそうだけど……いい?」
相手の返事を待たずして、「ズブブッ」と奥まで挿れるアルム。そして激しくぶつけるように腰を振った。
「うわぁっ……はぁ……あぁ……! アルムさん、アルムさん……!!」
男の顔は真っ赤で、口からは唾液がダダ漏れている。アルムは腰を動かしながら器用に、振動するオナホールのようなものに男のものをいれスイッチをいれた。
「あああぁ……! ダメです! 刺激がっ……はぁっ!」
男の喘ぐ声は、ほぼ絶叫に近い。
「俺がイクまで、ちゃんとしてないとだめだよ。俺の下僕ちゃん」
アルムは唾液でベトベトになっている男の口に、自分の指を突っ込む。
「あっ……あっ……!」
「んっ……イクッ……!」
──!!!!!
── ─ ─
辺りに散らばる玩具、ぐちゃぐちゃになったのソファの上で、執事の男が寝息を立てている。
「少し激しくし過ぎたかな……」
アルムは慣れた仕草で煙草に火をつけ、限界まで煙を吸い込むと、ふーっと一気に吐いた。
一瞬にして部屋の中が、モヤがかかったように白くなる。
「……そういや最近会えてないな」
部屋の隅に無造作に並べている、大量の玩具を見ながら、アルムは煙草の煙を燻らせる。
「どうしてるかな……」
天井を見つめるアルムの目は、少し熱を帯びていた。
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