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#17 好意と行為
「……それで、なんでこんなことになったんですか? ご主人様」
何事もなかったかのように椅子に座っているシオンと、その隣に立つヤナギ。
「これは実験だよ、カノキ」
シオンは胸に手を当て、その手をギュッと握りしめる。
「私は初めてミコトを見た時から、ミコトに惚れているんだ」
──!!
それを聞いたヤナギとカノキの表情が変わった。
「シオン様っ……本人の前で言うのはまだ……」
(僕に惚れている? 何故……?)
この前のことが頭の中でフラッシュバックする。僕はシオンを見ることができない……。
「良いじゃないか、別に。そして、ヤナギもミコトに惚れている」
「えっ……?」
僕は恐る恐るヤナギの方を見る。
いつも冷静沈着なはずの彼は、見たことのないとても動揺した表情をしていた。
「シオン様、何故それを……!」
「簡単なことさ、さっきヤナギとヤる前に、こう言ったんだ」
──君が〝僕〟を差し置いて、ミコトのことを気にしていることは知っている。最近ヤる回数も減ってきてるのはそのせいだろう? 今の君の立場を脅かす大問題だね。[[rb:大事 > おおごと]]にしたくなかったら、今すぐ僕を抱いてよ。
「シオン様、それは……」
ヤナギの顔が、耳まで赤い。
「君は私を抱くのを選んだね。あれは嘘だよヤナギ。君の本音を知るために、カマをかけたんだ」
「………」
ヤナギはもう、何も言わない。というより言えない感じだ。
「そして、カノキ。君もミコトのことが好きだね」
「ご主人様、なんで……」
シオンは自分の右目を指さした。
「まぁ視えるよね、私がヤナギとヤってた時、隣の部屋で何が行われてたかくらいは」
「えっ……と」
カノキは、気まずそうに下を向く。僕はカノキと……キスしてた。でもそれをシオン達には見られてないはずなのに……。
僕はカノキの方も見ることが出来なくて、俯くことしか出来ない。
「私は少しだけ目が良いんだ」
「シオン様それは……」
「いーよ、これくらいは、王家の歴史書をちょっと調べれば載ってるようなことだ」
「ご主人様……そんな、知らなかった、俺」
──ごめん、ミコト
「な、なんでカノキが謝るの?」
「こういうの、人に見られてたら嫌かなと、思って」
カノキは僕の方を見ている。つられて顔を上げると、カノキは泣き笑いのような不思議な表情を浮かべていた。
「申し訳ございません、ご主人様。この行いは決して許されることと思いません。この命に変えて、責任をとらせていただきます」
「え、カノキ……!」
ひざまづいてそう言うカノキに、僕は近づこうとしたら、それを制するようにシオンが口を開いた。
「良いよ、私は寛大な王子だから、〝一瞬の気の迷い〟だったことにしてあげよう。それより問題は、何故この短期間で、私とヤナギ、カノキは同時にミコトに対して好意を持つようになったんだろうね」
………。
誰も、何も言わない。時間だけが刻々と過ぎていく。
「それに関して、ちょっと気になる情報を持っている者がいるらしい」
「シオン様、それは……」
何かを言いかけたヤナギを遮るように、シオンは言う。
「隣国の王子だよ。今度会うことになっているから、その時はミコトも同席するように」
シオンと目が合う。まっすぐ向けられたその視線で、僕は自分に拒否権が無いことを悟った。
「……分かりました」
「カノキもね」
「はい……」
カノキは酷く落ち込んだ様子で、まだ下を向いている。
「話は以上だ。詳しくは追って連絡させる。2人とも帰って良いよ」
僕たちがドアの方へ向かうと、シオンがカノキを呼び止めた。
「カノキ、君は今夜〝お仕置き〟だから」
「はい……かしこまりました。ご主人様」
力なく答えるカノキ。
(お仕置き……?)
僕はその言葉に違和感を覚えたが、とにかくこの気まずい状況から早く離れたくて、カノキと共に執務室を後にした……。
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