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秋祭り⑥

小さな滝から流れ落ちる水の音に混じって、濡れた唇同士がぶつかる音が響く。 「……はぁ……」 「……んん……」 露天風呂の横で、裸のまま口付けを深め合う二人からは、薄らと汗が滲んでいた。 気持ち良い。 キスしてるだけで、こんなにも多幸感に包まれる。 響は、自分まで下半身に熱が籠るのを感じた。 奏はうっとりとした表情で瞼を閉ざしかけながらも、口付けを落とす響の視線を受け止めていた。 「んっ。ん……、響……」 奏は、響の唇が一瞬離れた時にこう口を開いた。 「響が口実に使った、『これからいちゃつく』って言葉……ホントになっちゃったね……」 「だって本当にいちゃつきたかったから」 「……んんッ」 次第に舌が絡まり、指先同士も再び絡んでいく。 ——だがそれから間も無く、奏の身体から力が抜けたようになり、ぐったりと響の肩にもたれかかった。 「っ奏——!?」 「……ごめ……、お酒のせい……だと思う……身体がふらふらする」 「脱衣所に行って、すぐ水を飲もう!」 響は慌てて奏を立ち上がらせた。 肩を貸しながら脱衣所まで戻って来ると、幸いあの男二人組はもう居なくなっていた。 洗面スペースの隣に設置されているウォーターサーバーから紙コップに水を取ると、響はすぐさま奏に水を飲ませた。 「……はぁ……」 奏は脱衣所の長椅子に座り込み、しんどそうな表情で項垂れた。 「無理させてごめんな……。 休んだら、部屋に戻ってもう寝よう」 「……ん……」 その後、奏の具合が少し良くなるのを待って脱衣所を出ると、再び肩を貸しながら部屋に戻った。 布団にどさりと倒れ込むと、奏はそのまま眠ってしまった。 ——翌朝、奏が目を覚ますと、隣で心配そうに見てくる響と視線が合った。 「……響。起きてたの?」 「奏が昨日、のぼせて具合がかなり悪そうだったから—— でも寝てる間も呼吸してたし、ちゃんと目覚めてくれて安心したよ……」 「……なにそれ。響、一睡もしなかったってこと?」 奏が起き上がって尋ねると、響はこう言った。 「大丈夫。今日はバスに乗って帰るだけだし。 バスの中では寝ると思うけど」 「そっか」 「変な顔で寝てたら、起こして教えて」 「……変な顔って?」 奏が尋ねる。 「えー。例えば大口開けてるとか、半目になってるとか……あといびきがうるさかったら小突いて」 「分かった」 ——バスに乗り込むと、案の定すぐに眠気が襲ってきた。 響がうつらうつらと船を漕いでいると、隣で奏が何やら自身の鞄を漁り始めた。 宿泊のための荷物など何も持って来ず、鞄を触る気配などまるでなかった奏が ここに来て何かを探し始めたことが気になった響は、半開きの目でその様子を見ていた。 ——奏は、くしゃくしゃに折れ曲がった白紙の五線紙と鉛筆を取り出すと、そこに何かを書き付け始めた。 「……奏……?」 響は、寝ぼけ眼のまま奏に尋ねた。 「それ……五線紙……」 「久しぶりに音楽が頭に浮かんだから……書き留めておこうかなって」 「!……奏、音楽が浮かぶようになったの!?」 響はぱちっと目を開けると、驚いて奏を見つめた。 「スランプ抜けたってこと?」 「……実はこのロケ地に入ってから、何かが頭の中でぼやけてはいたんだけど…… 解像度の低かった何かが見えてきて、今ようやく形を作ってくれた感じ」 奏はそう言って鉛筆を動かし始めた。 そこからの集中力は凄まじいもので、バスが急カーブをした時も、トイレ休憩のアナウンスが入った時にも 奏は一切鉛筆を止めることがなかった。 奏が曲を作る姿をここまで間近で見たのが初めてだった響は、眠気もすっかり吹っ飛びそれを眺めていた。 スランプに陥る前は、ピアノの部屋に籠って集中していた奏だったが、 今は外野からの視線や音、振動、何もかもに気づかない様子で曲作りに打ち込んでいた。 真顔で書き進めていく奏だが、響にはそんな奏の表情が生き生きと輝いているように見えた。 ——人を魅了する曲を次々に思いつくことのできる奏のことを羨んでいた。 作曲家を志した時には、奏の才能に嫉妬することもあった。 けど—— 今は、生き生きと音楽を作る奏のことが愛おしい。 奏が楽しそうに曲作りに打ち込む姿を見ているのが幸せに思う。 隣にいる俺の存在なんてまるで忘れて、音楽のことしか見えなくなっている、こういう奏が奏らしいと思ってしまう。 響は目を細めながら奏の横顔を見つめていた。 ——バスが都内に着く頃、奏は既に曲を完成させていた。 「ねえ、その譜面見せてよ」 如月邸へと歩く道すがら、響は奏に、出来上がったばかりの譜面を見たいと頼んだ。 しかし奏は、「だめ」と返す。 「なんで?」 「披露するなら譜面じゃなくて、ちゃんとピアノで弾いて聴かせたいから」 「じゃあ、帰ったら弾いて」 「疲れたから、また今度」 「ええ……」 結局響は、その日譜面の内容を見せてもらうことも、弾いて聴かせてもらうこともできなかったものの、 奏が再び曲を作れるようになったことを本心から喜んでいたため、今は無理に弾いてもらうことはない——そう遠くないうちに聴かせてもらえる日が来るだろう、と思い直した。 東京に戻って来てからも『血染めの理想郷』の撮影は続き、 少しして再びスタジオを離れての撮影をすることになった。 とはいえ、ロケ地が都内にある洋館のため、今回は宿泊を伴わずの撮影だった。 響と奏が洋館の中に入ると、二人は「あ」と揃って声を出した。 応接間としてセットされた広い部屋の中に、一台のグランドピアノが置かれていたからだ。 「グランドピアノがある」 「ね。奏の家と違って、こっちのはよく見るような黒だけど」 奏と響が話していると、五十嵐が二人の方にやって来て言った。 「実はこのロケ地を押さえた時に、ここに元々ピアノがあるということを知ってね。 それで——急遽、脚本を書き換えようと思っているんだ」 「脚本の変更?」 二人がきょとんとすると、五十嵐はピアノに触れながらこう言った。 「スランプの渦中にいる奏くんに、こんな頼みをするのはどうかとも思ったけれど—— 君がピアノを弾いているカットを収めさせてもらえないかな?」 「……大久保利通として?」 「そうだ。彼がピアノを弾けたかどうかは分からない。 けれども大久保の心情を表現する演出として、ピアノを奏でるシーンを入れたいんだ」 五十嵐の筋書きではこうだった。 西南戦争が終わり、西郷を亡くした大久保。 彼の秘めた思いを知らない仲間達は、新政府軍の勝利に沸いていた。 洋館を貸し切って、祝いのパーティーを開く最中、大久保は密かに人の輪を抜け ピアノの置いてあるこの部屋を見つける。 音楽の教養などまるで持ち合わせていない西郷には 聴かせたところで喜んでもらえるはずがないだろう、と思いつつも いつか披露しようと思っていたピアノ。 大久保は、観客の誰もいない部屋の中で、一人西郷に捧げるために旋律を奏でたのだった—— 「……というシーンにしたくてね。 演奏する曲は何でもいいんだ。 後で、何か有名なクラシック音楽を編集で重ねようと思っている。 それらしく指を動かしてくれるだけでもいいから——受けてもらえないだろうか?」 「……」 奏は少し考えた後、「いいですよ」と答えた。 「何でもいいって言われた」 奏は響にそう告げると、 「せっかくだから、あれを弾いてみるかな」 と続け、そのまま撮影の準備に入った。 あれって、もしかしてバスの中で作っていた曲のことだろうか? とうとう、スランプ明けに作り上げた例の曲をお披露目してくれるんだな。 響はわくわくと心を踊らせながら、静かに見守ることにした。 カメラが回り始め、立派なスーツに身を包んだ奏演じる大久保が、少し酒に酔った足取りで部屋の中に入ってくる。 ピアノがあることに気付くと、彼は静かに椅子に座る。 「……君に、とうとう披露することはなかったな。 今更かもしれないが——空の上にいる君に、この曲を捧げよう」 そうして、奏は鍵盤に触れた。 ——最初の音が鳴った瞬間から、辺りに静寂が訪れる。 撮影しているスタッフも、監督の五十嵐も、皆が息を呑んだ。 その場の誰も聴いたことのない、例えようのない美しい音色。 それは間違いなく、如月奏にしか作れない音楽だった。 それも過去に奏が発表してきたどの楽曲とも違う。 まだ世の中に出ていない、オリジナルのメロディー。 そのメロディーは、その場にいる全員の心を掴み、惹きつけた。 一方、それを奏でている奏自身も、カメラ越しに分かるほどの色気を放っていた。 奏からは、これまでの撮影では醸すことのなかった色香が漂い、ピアノの旋律と調和していた。 優しく、激しく、表情豊かに進んで行く音楽に誰もが魅了された。 ——響もまた、その一人である。 この曲……。 この曲は、『2月のセレナーデ』……!! 奏はあのバスの中で、俺の隣で、『2月のセレナーデ』を生み出していたのか! 俺の……世界で一番好きな、そして大切なあの曲を……! ——ピアノを弾き終え、奏が切なそうに顔を上げて空を眺めるシーンまで演じたところで、カットが入るはずだった。 だが、何も合図がかからない。 暫く空を眺めたままの体勢でいた奏が、不思議そうにカメラの先にいる監督の方を見た。 そこで五十嵐はようやく我に返ったように「カット!」と声を発した。 「……何だ、この音楽は……」 五十嵐は声を震わせながら、ゆらりと立ち上がった。 「奏くん……。今の曲は……?」 「俺が数日前に完成させた曲です。 『2月のセレナーデ』ってタイトルを付けました」 「……2月のセレナーデ……」 五十嵐はまだ、震えたまま暫く立ち尽くしていたが、やがて目に力を込めて奏を見つめた。 「奏くん——どうか、今の曲を映画に使わせてくれないか。 『2月のセレナーデ』……音楽にこれほど胸を打たれたのは、生まれて初めてのことだ。 この映画に……ぜひとも『2月のセレナーデ』を使わせて欲しい……!!」 すると奏は、五十嵐にこう返した。 「いいですよ。ただ、一つお願いがあります」 「なんだい?」 「曲のタイトルさえ、このままで良いということであれば使ってください」 すると五十嵐は「もちろんだとも」と言い、それから少し考えた後にこうも告げた。 「むしろ曲のタイトルに合わせて、映画のタイトルを変えても良いくらいだ。 『2月のセレナーデ』——うん、良い響きじゃないか」 「どうして『2月のセレナーデ』なの?」 ——撮影を終え、二人で如月邸に帰る道中。 奏の披露した音楽で大盛り上がりだった現場では聞き出せなかったことを、二人きりになったあと尋ねた響。 「なんとなく。 そういうタイトルがいいかなって思っただけ」 「嘘だ。監督に、タイトルさえ変えなければ使っていいって言ったくらい、こだわりのあるタイトルなんでしょ?」 「……」 「なんで2月なの?なんでセレナーデなの?」 響は食い入るように聞いた。 「なんで、って」 「だって今10月だし。 あと、どうして『セレナーデ』? セレナーデって、器楽合奏曲でしょ? でも奏はピアノで演奏する前提で楽譜を書き上げたみたいだから……」 すると奏は、 「ほんと、ただパッと思いついただけなんだけどな」 と頭を少し掻いた。 「語感が良かったから、じゃだめ?」 「駄目」 「どうしてそんなに知りたがるの?」 「元の時代にいた頃に、如月奏という音楽家を好きになったきっかけがこの曲だったから」 「……」 「そして、音楽そのものを好きになったきっかけになった曲でもあるんだ。 だからその曲のタイトルにも、ちゃんとした背景があって欲しいって思った」 響が熱量をぶつけると、奏は少し驚いたような表情を浮かべていたが、やがて諦めたようにぽつりと話し始めた。 「ほんと、大したものじゃないよ。 ——俺の苗字って『如月』でしょ?」 「如月——あ、もしかして『2月』ってそういうこと?」 「うん。これは『如月奏のセレナーデ』。 これは俺の心を音楽の形で表現した曲——って意味」 「如月奏のセレナーデ……」 2月の意味は分かった。 けれどセレナーデは? 「それからこれ、響のお陰でできた曲だから」 響が考えていると、奏が続けた。 「俺?」 「うん。響がインスピレーションをくれたんだよ」 「そう……なの?」 響がぽかんとすると、奏は少し照れくさそうに顔を背けて言った。 「『セレナーデ』って、器楽合奏曲とは別にもう一つ意味があって。 オペラなんかで使われんだけど、恋人の部屋の窓下で、恋人を想って歌い奏でる音楽って意味もあるんだよ」 「!……ああ、そういえば……そんな意味もあったっけ。 オペラはあまり詳しくないから忘れていたよ。 『ロミオとジュリエット』にもそんなシーンがあったね。 じゃあ奏は愛を表現する音楽という意味を込めて『セレナーデ』とつけたってこと?」 響が問うと、奏はこくりと頷いて言った。 「……響に俺の秘密を打ち明けて……その秘密ごと、俺を受け入れてもらえたことが嬉しかった。 昔から俺の過去や身体のことを知っていたマネージャー以外の誰かに、俺の秘密を話したのは初めての経験だった。 すごく勇気が要ったけれど、響はちゃんと聞いてくれた。 絶対に引かれると思ったけれど、響は引かずに受け止めてくれた。 あの晩、響が俺に触れてくれた時——愛ってこういうものかもしれないと思った」 愛—— 奏が裸の姿を見せた時、俺は奏に触れたいという感情が自然と湧いてきた。 奏が俺に晒け出してくれた秘密を、受け止めたいと思ってるって気持ちを どうやったら表現できるかと考えて—— それでとっさに出てきた言葉が『触れたい』だった。 あれは愛情だったのだろうか。 一言で形容するのはとても難しい。 言葉で言い表そうとするのは到底無理だ。 「響と心が通じ合った日——記憶も、あの時感じた気持ちも、ずっと残したいと思った。 それに『愛』って、言葉ひとつでは定義が曖昧で不明瞭だけど、音楽ならばもっと自由に表現できる。 言葉選びが下手な俺でも譜面の上では饒舌になれる。 言葉じゃなくて音楽で、俺から響に対しても、愛を返せたらいいなって—— そんな気持ちを込めて作ったのが『2月のセレナーデ』だよ」 響は気付くと、瞳からボロボロと涙をこぼしていた。 自分でも驚くほど、大粒の涙がとめどなく溢れてくる。 「な……んで、泣いてるの……?」 奏が動揺する様子を見せる。 響は慌てて涙を拭おうとしたが、拭った後も涙は絶えずこぼれ落ちてきた。 もはや自分の内側から溢れてくる感情をコントロールすることができなかった。 「……嬉しくて……」 響は唇を震わせながら言った。 「俺、『2月のセレナーデ』がこの世で一番好きな曲だから……。 俺の人生を変えてくれた——音楽を好きになるきっかけをくれた、大切な曲だから……。 それが、俺のことを思って作られた曲なんだって言われたら、もう……さ……。 凄く……嬉しくて……」 俺が『2月のセレナーデ』と出会った時から、俺は言わばこの曲に片想いをしていた。 この曲にどうしようもなく惹きつけられ、この曲に出会えた喜びと感謝を作者に伝えたいとどんなに願ったことか。 如月奏という才能に、どれほど焦がれてきたことか。 俺は人生の半分以上を音楽と共に歩んできた。 けれどピアニストとしても作曲家としても夢を叶えることができず、俺の先を行き続ける存在が音楽だった。 だけど奏のおかげで、俺はようやく音楽に振り向いてもらえた気がする。 追いかけるばかりだった存在に向き合ってもらえたような思いがしている。 『2月のセレナーデ』に惹かれた理由—— それはこの曲が、最初から俺に振り向いてくれていて、そこで待っていてくれたからなのかもしれない—— 「……ありがとう、奏……」 響は暫くの間、道端に立ち尽くしたまま涙をこぼし続けた。 ようやく涙がおさまり、再び歩き始めた二人。 「でも、考えてみれば—— 元の時代でも、『2月のセレナーデ』って曲が世に発表されたのは、俺が産まれたぐらいの年だったから やっぱり奏はこの時期にこの曲を生み出す運命だったってことになるのか……」 響は、自分がタイムスリップしてきた事で奏の人生に介入し、未来を改変してしまったのではないかと思っていたが、 奏が元の時代と同じ時期に『2月のセレナーデ』の原案を作ったことで この曲が、元の時代と同じ時の流れを辿っている事に気付いた。 すると、それを聞いた奏は思い出したように顔を上げた。 「響は今、23歳なんだよね」 「え?うん」 「で、響にとってはここが23年前の世界。 ——ということは、響が産まれた年でもある?」 「俺、三月生まれだから……あと半年くらいで、この世に『俺』が誕生するはず」 「……この世に響がもう一人産まれたら、それってどうなるの?」 「……」 確かに、それは自分も考えたことがあった。 「まあ——俺が産まれたのは地方だし、東京に出てきたのは大学を卒業した22の時だから。 もう一人の俺が離れた地で産まれたところで、鉢合わせするようなことはないでしょ」 「鉢合わせしなければ大丈夫なの?」 「ほら、ドッペルゲンガーだって会えば死ぬって言われてるけど、会わない限りは死なないんだし」 「……会わなくてもさ。消えたりはしない?」 「え?」 「この世に赤ん坊の響が産まれた途端に、ここにいる大人の響が消えてしまったりしないよね?」 奏が不安そうに尋ねた。 そう言われると、自分も自信が無くなってきてしまう。 「どう……だろ。 俺自身、タイムスリップなんて当たり前だけど経験したことなかったから……。 どうなるかなんて分からないけど」 響は立ち止まり、奏を見た。 「でも、俺は奏さえ嫌じゃなければ、これからだって『今の奏』と一緒にいたいよ」 「……響が23年後に戻ったら、その時俺はもう死んでるんだもんね」 ぽつりと言う奏と、響はたまらず向かい合い、肩に手を乗せて言った。 「——奏。頼むから健康でいてくれよ。 俺が元いた時代では、奏の死因が伏せられているからどうして死んでしまうのかは俺も分からないんだ。 43歳なんて……そんな若さで死んでほしくない」 「43なら何らかの病気にかかってもおかしくなさそうだけど」 「でも若いよ!だって日本人の平均はその倍も生きてるんだから! 43で健康な人は沢山いるんだから! 俺——奏にはもっと長生きしてほしい。 作曲家として、もっと沢山の音楽を残してほしいって気持ちもあるし…… それにもし、俺が元の時代に戻ったとして、そこで生きてる奏と再会できたら こんなに嬉しいことはないから——」 響が言うと、奏は少し考えた後、口を開いた。 「……なるべく、長生きできるように気をつけては過ごすよ」

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