8 / 21
第8話 大賢者の弟子 カジェside
若く旺盛 な食欲を満たすために、目の前にある大量の食事を2人でとりながら… カジェはアニマシオンの質問に答えた。
「未来視 とは、何がどのように… 見えるのだ?」
「未来視 の魔法は、万能 ではありません… ですから国の未来という大規模で漠然 としたものは見れないのです… 依頼者個人が体験するであろう、近い未来という程度の範囲のことしか見ることが出来ません」
だからこそ、他の誰でもなく… 王国の王が体験する未来を見ることで、王国に関連する未来を、より多く大賢者は予見 することが出来るのだ。
大賢者が国王の“番 ”となり、王国ではなく… 国王ただ1人に忠誠を誓う理由が、ここにある。
「依頼者個人… つまり私の未来についてのみ、カジェは見ることが出来ると言うのだな?」
「はい、殿下! 未来視の魔法には僕の魔力だけでは不十分で、ええっとぉ… 依頼者である、殿下と僕の… 魔力を混ぜ合わせて… 融合 させてないと、上手く魔法が発動しないのです… 例えば、僕自身が僕の未来視をするのなら、僕の魔力だけでも未来視の発動条件は満たされますが…」
そして殿下の魔力と、僕の魔力を融合させるには、性行為が必要不可欠で… 未来視をするなら、殿下は毎回、僕と性交をしなくてはいけなくて… どうしよう?! 本当にいろいろな意味で、殿下には僕を好きになってもらわないと、困るんだけど…… うう~ん…
今、そのことを殿下に伝えた方が、良いのかなぁ?!
でも、でもっ! 何か急に、恥ずかしくなって来たよぉ~?! それに… 未来を知りたければ、僕といっぱい性交をしなければいけないのを知って、殿下が嫌がったらどうしよう?!
食べるそぶりも無く、皿の上のパンを弄 ぶように、細かくちぎりながら… カジェはポッポッポッポッ… と頬をピンクに染めたり、急に青くなったりする。
「・・・・・・」
不作法に頬杖 をつき、大粒のブドウを口の中に放り込みながら、アニマシオンは、動揺するカジェの様子をじっ… と見つめた。
カジェの口から『魔力の融合』という言葉を聞き、前夜の儀式の内容を照らし合わせて、聡明なアニマシオンは未来視の魔法に、性行為が必要なのだと自力で覚 る。
「それで、あの… ですから僕は… “番”となった殿下の専属賢者となるのですが… それで未来視の魔法にはですねぇ………?」
どうしよう! 恥かしくて、やっぱり言えない! でも、すぐにわかることだし… でも、殿下に嫌な顔されたら、どうしよう?!
「なるほどなぁ~… ふむふむ… 面白い! それで私は、媚薬入りの薬酒を、父上に盛られたのか?! …まったく! はっはっはっはっは!」
何がおかしいのか、カジェには理解できなかったが、からからと明るい声を上げて、アニマシオンは笑った。
機嫌良く笑うアニマシオンの笑顔につられて、カジェは苦笑いを浮かべる。
ともだちにシェアしよう!