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第8話 大賢者の弟子 カジェside

   若く旺盛(おうせい)な食欲を満たすために、目の前にある大量の食事を2人でとりながら… カジェはアニマシオンの質問に答えた。 「未来視(さきみ)とは、何がどのように… 見えるのだ?」 「未来視(さきみ)の魔法は、万能(ばんのう)ではありません… ですから国の未来という大規模で漠然(ばくぜん)としたものは見れないのです… 依頼者個人が体験するであろう、近い未来という程度の範囲のことしか見ることが出来ません」  だからこそ、他の誰でもなく… 王国の王が体験する未来を見ることで、王国に関連する未来を、より多く大賢者は予見(よけん)することが出来るのだ。  大賢者が国王の“(つがい)”となり、王国ではなく… 国王ただ1人に忠誠を誓う理由が、ここにある。 「依頼者個人… つまり私の未来についてのみ、カジェは見ることが出来ると言うのだな?」 「はい、殿下! 未来視の魔法には僕の魔力だけでは不十分で、ええっとぉ… 依頼者である、殿下と僕の… 魔力を混ぜ合わせて… 融合(ゆうごう)させてないと、上手く魔法が発動しないのです… 例えば、僕自身が僕の未来視をするのなら、僕の魔力だけでも未来視の発動条件は満たされますが…」  そして殿下の魔力と、僕の魔力を融合させるには、性行為が必要不可欠で… 未来視をするなら、殿下は毎回、僕と性交をしなくてはいけなくて… どうしよう?! 本当にいろいろな意味で、殿下には僕を好きになってもらわないと、困るんだけど…… うう~ん…  今、そのことを殿下に伝えた方が、良いのかなぁ?!  でも、でもっ! 何か急に、恥ずかしくなって来たよぉ~?! それに… 未来を知りたければ、僕といっぱい性交をしなければいけないのを知って、殿下が嫌がったらどうしよう?!   食べるそぶりも無く、皿の上のパンを(もてあそ)ぶように、細かくちぎりながら…  カジェはポッポッポッポッ… と頬をピンクに染めたり、急に青くなったりする。 「・・・・・・」  不作法に頬杖(ほおづえ)をつき、大粒のブドウを口の中に放り込みながら、アニマシオンは、動揺するカジェの様子をじっ… と見つめた。  カジェの口から『魔力の融合』という言葉を聞き、前夜の儀式の内容を照らし合わせて、聡明なアニマシオンは未来視の魔法に、性行為が必要なのだと自力で(さと)る。 「それで、あの… ですから僕は… “番”となった殿下の専属賢者となるのですが… それで未来視の魔法にはですねぇ………?」  どうしよう! 恥かしくて、やっぱり言えない! でも、すぐにわかることだし… でも、殿下に嫌な顔されたら、どうしよう?! 「なるほどなぁ~… ふむふむ… 面白い! それで私は、媚薬入りの薬酒を、父上に盛られたのか?! …まったく! はっはっはっはっは!」  何がおかしいのか、カジェには理解できなかったが、からからと明るい声を上げて、アニマシオンは笑った。  機嫌良く笑うアニマシオンの笑顔につられて、カジェは苦笑いを浮かべる。

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