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第14話 父と息子の晩餐

 国王から補佐官経由(けいゆ)晩餐(ばんさん)の誘いを受け、アニマシオンは忙しい公務を調整し、喜んでご一緒させていただ来ます… と快諾(かいだく)の返事をした。  「アニマシオン、公務を意欲的にこなしているそうだな? あの頑固で気難しい、王国法大臣が私よりもお前の方が優秀だと、褒めていたぞ?」 「私を褒めた?! 先日、その頑固で気難しい王国法大臣に会いに行った時は、思いっきり嫌な顔をされて、私は結局話の途中で追い出されたのですが?」  もぐもぐとぶ厚い肉を食べ終えると、ナイフとフォークを皿に置き、口のまわりをナプキンでぬぐってから… アニマシオンは愚痴っぽく王国大臣との記憶を国王に語った。 「ふふふっ… 本当に気に入らなければ、我々王族でも会うこともかなわない老人だから… お前が彼に対面したと言うのなら、『グズグズしていないで自分の思いどおりにもっと働け』と、大臣流の激励(げきれい)をしたのさ」 「私には、とてもそんな風には、見えませんでしたが?」  白いあご(ひげ)を胸までのばし、眉間にしわを寄せて怒鳴り散らす、王国法大臣の顔を思い浮かべ… アニマシオンは首を(かし)げた。 「王国法大臣の立場上、へたに上位貴族や王族と仲良くすると… 自分の公平さに、疑いを持つ者があらわれる恐れがあるため、あえて王族が相手でも傲慢(ごうまん)に振る舞い、平民と同じ扱いをして距離を保とうとしているのさ、あの老人は…」 「なるほど… そういうことでしたか!」  自分はまだまだだな… とアニマシオンは、苦笑いを浮かべた。  「他の大臣や宰相たちから聞いた、お前の評判は良さそうだから、このまま(おご)らず頑張りなさい」  どうやら国王は、公務を真面目にこなすアニマシオンを、褒めてやろうと、晩餐に呼んだらしい。 「ありがとうございます、父上! 私から1つお話があるのですが?」 「何だ? 言ってみなさい」 「はい、父上! …もう少し第二王子()に、公務を任せてはどうでしょうか?」 「うむ、それで?」 「彼はまだ学園生ですが… 私も学園生の頃から、公務はこなしていましたし、彼にも私と同じことが、出来るはずですから… 第二王子()にも王族の義務と責任をもっと自覚して欲しいのです! 」  父上の考えは理解できる… 第二王子を押す勢力の勢いを少しでも削ぐために、わざと公務から外して実績を残させないようにして、私との能力の差を見せつけようとしていると… 「・・・・・・」  国王は苦笑を浮かべ… 2人だけで話そうと、室内にいた使用人を全員退室させた。 「これ以上、第二王子に遊びぐせを付けさせては、将来使い物にならない、王家のお荷物になりそうで、私は心配なのです、父上… エスタンブレ大叔父上のように放蕩者(ほうとうもの)となって、私生児が何人も現れたりするようなことになったら…? 足を引っ張られるどころでは、ありませんし」  エスタンブレ大叔父とは先代国王(アニマシオンの祖父)の末弟で、王族に生まれながら、義務である公務をこなすどころか… ギャンブルと酒に溺れ多額の借金を作り、デビューしたばかりのオメガたちを、誘惑してはもてあそびと… あらゆる不誠実な行為を繰り返した。  その結果、何人もの若いオメガたちはを婚約破棄に追い込まれ、有力貴族たちの恨みを買うこととなり… 最後には廃嫡(はいちゃく)され、平民にまで身分を落とされた、伝説的な放蕩者である。 「なるほど… お前はなかなか手厳しいな! 確かに第二王子(あいつ)のだらしなさを見ていれば、私生児が1人ぐらいいても、おかしくなさそうだ… 何か対策を考えておこう」 「お願いします」 「第二王子のことよりも、お前自身の方はどうなのだ? そろそろいくつか、予見(よけん)を聞いたのではないのか?」  国王が言う予見とは、未来視(さきみ)の魔法で得られる、アニマシオンの未来に関する情報のことである。 「そ… それは…」  アニマシオンの顔が強張る。

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