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第19話 未来視の魔法2 アニマシオンside

 未来視(さきみ)の魔法が消え、薄暗い秘儀(ひぎ)の間へと景色が戻っても… ドクッ… ドクッ… ドクッ… ドクッ… 動揺するアニマシオンの心臓は胸の中で、暴れ続けた。 「今のは… 今のはいったい、何だったんだ?!」  第2王子()の恋人と、なぜ私が結婚するんだ? 今のは本当に私の未来なのか?! それとも単なる… 悪夢…?! 「始めに見えたのが、近い未来… 次に見たアニマシオン様の結婚式はその次に起きる未来… そして最後に見た2人の赤ん坊のはもっと先の未来です」 「待ってくれ! なぜ私が弟の恋人を妻にするんだ?!」  いくら未来視の魔法に慣れていると言っても… カジェはなぜ、こんなにも冷静でいられるんだ?! 私が他のオメガと結婚する未来を見たのに?! 「アニマシオン様… これは避けては通れないことなのです」  視線をアニマシオンから()らして、カジェは寂しそうに微笑む。 「避けては通れない… 確かにそうだが…!」  もちろん、王太子になった時に… 政略結婚も、覚悟していたが… 「今の予見(よけん)で大切なのは、そこではありません」  再びカジェは視線を合わせ、アニマシオンの頬をなでる。 「・・・・・・」  まさか、こんなものを見せられるとは… ああ、クソッ…! まったくの予想外だった! 「アニマシオン様はご自分のことを、国王陛下に何も聞いてないのですね?」 「父上に? 何のことだ?」 「あなたのお母様は王妃さまではなく… ピントゥラ様だということを…」 「はあっ…? 何を言っているんだ、カジェは?!」 「一番最初に“(つがい)(ちぎ)り"を(かわ)した場所にあった魔法陣は、あなたと僕の魔法を融合(ゆうごう)させられるか、確認するのに使いましたが… 実はあれ、本来の目的はオメガを身籠(みごも)らせるためのものなのです」 「はあ―――っ?!!!」 つまり父上も、初めて童貞をすてた時に… 大賢者ピントゥラを身籠らせたというのか?! 何てこった…! 「賢者と国王の間に、子供を1人作るということは… 僕たちにより強固な(きずな)が、生まれることになるでしょう? そうすれば、未来視の魔法で見る予見も、強い絆が出来たぶん、より鮮明に見えるようになるから」 「・・・・・・」  そういう大切なことは… 全部、先にいっておいて欲しかった! 父上もカジェも、なぜそういう大切なことは、私に内緒で行うんだ?!  意外と頭がかたいところがあるアニマシオンを、説得するのが面倒だと、国王がそう思ったからである。 「アニマシオン様は、僕との子が… そんなに嫌ですか?」  動揺し落ちこむアニマシオンを見て… 自分のお腹をなでながら、カジェはしょんぼりとする。 「嫌っ! 違うっ!! そういう意味ではないから!! 本当に違うから!! ああ、嬉しいよ?! カジェに私の子が出来たことは… すごく嬉しいからな?!」  大あわてで、アニマシオンはチュッ… チュッ… とカジェの顔にキスの雨を降らした。 「……本当に? アニマシオン様は嫌じゃない?」 「嫌じゃない! ぜんぜん嫌じゃないぞ?!」  うん! うん! と大きくうなずき、アニマシオンはカジェの唇を奪う。  カジェの前では頑張って元気に見せていたが… 本音では衝撃が強過ぎて、心も身体も… ついでに性器もふにゃふにゃらら~… と脱力するアニマシオン。  第2王子の子供を身籠ってしまった、アセプタル侯爵家の令息コルザ。  大賢者カジェとの間に、子を持つこととなる王太子アニマシオン。  2人は互いの子を我が子として受け入れ… 互いの立場を尊重し “番の契り”を交わさず… お互いの恋人にも干渉しない。  いくつかの条件を決めて、アニマシオンとコルザは、王太子と王太子妃という仕事上のパートナーとして、契約結婚をすることに合意した。  

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