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第20話 その後 アニマシオンside

   腕の中で眠る我が子の額にそっとキスを落として、カジェは微笑んだ。 「すまないカジェ…」 「ふふふっ… どうして謝るのアニマシオン?」 「うん…」  微笑んでいても… カジェの顔が悲しそうに見えるからだよ……?  息子リモンを抱くカジェを、アニマシオンも抱き締めた。 「こうして時々、この子に会わせてくれただけで、僕はじゅうぶん幸せだから… そんなに辛そうな顔をしないで下さい」 「うん…」  生まれてから3ヶ月間だけは、カジェの手でリモンを育て、その後は地上に連れて行き、王太子妃となり王女(弟の子)を産み落とした、コルザの手にゆだねた。  双子で生まれたように偽装するには、その方法しか無かったからである。  契約結婚で共犯者となった王太子妃のコルザは、制約の魔法を受け入れ、大賢者カジェと息子リモンの情報をアニマシオンと共有している。  王太子妃のコルザの協力を得て、アニマシオンは時々… ぐっすりと眠るリモンを子供部屋から連れ出して、地下に住むカジェに見せに来ているのだ。  「アニマシオン… 無理をして、リモンを連れ出さなくて良いのですよ? 僕もわかっていますから… これ以上、僕と会い続けるとリモンに僕の記憶が残ってしまうかも知れないと… そうなって困るのは、あなたとコルザ様だし」 「・・・っ」  ああ、クソッ! 私の方が泣きそうだ! カジェがこんなに我慢していると言うのに… 私は本当にダメな夫だ!! 「あのね、アニマシオン… コルザ様がね、僕にもこの子の様子がしっかりわかるように、中庭に連れ出して見せてくれるんですよ?」  おかげでカジェは中庭を、毎日映写(えいしゃ)魔法で見ることで息子リモンが順調に成長していることを確認していた。  逆に、リモンの妹姫となったコルザの子セダの方を、病弱を装い、人前に一切出さないことで… 双子でも身体の大きさに差があることを、上手く誤魔化(ごまか)せているのだ。 「そうか… コルザに礼を言っておくよ」 「お願いします」 「・・・・・・」  アニマシオンはカジェに掛ける言葉が見つからず、黙り込んでしまう。  腕に抱いた眠るリモンを起さないように、カジェは背伸びをして、アニマシオンの唇にキスをして笑った。 「僕はあなたと一緒に未来視(さきみ)の魔法を使って、リモンが大人になるまでに、もっと、もっと… この国を豊かにしたいのです! 僕はこの手で息子を育てることは出来ないけれど… リモンが暮らす王国を育てる方法を知ることが出来るから… そうやってこの子にささやかな幸せを、贈り続けるつもりです…」 「カジェ… 君はすごいなぁ…!」 本当にこれでは頭が上がらないなぁ… 私の大賢者には! 私がどれだけ君を尊敬しているか、君は知らないだろうけど… 「ふふふっ… もちろんアニマシオン、あなたにも幸せを贈るつもりですよ? あなたが僕にいっぱい協力してくれればの… 話だけど?」 「……それはだな、愛する妻がいっぱい、おねだりをしてくれれば… 私はいくらでも協力するつもりだが?」

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