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第3話

アキの家はお金持ちだ。 関東では有名な相川財閥。 高級な衣服を扱う会社で、子どもから大人まで幅広いラインナップに、世代を問わず愛されている。 アキが着ている服はいつも自社製品だ。 品の良い仕立てで、着るだけで立派に見える。 ……でも、アキは見た目たけじゃない。 内面もとても立派だ。 一緒に通う中学校では、いつも学年トップの成績。それだけに留まらず、運動神経も良く、リレーではアンカーを任されるほど足も速い。 ……明らかに、僕とは住む世界が違う。 それでも僕達が仲良くなれたのは、あの日の公園での出来事があったからーーー ……… 僕がまだ幼稚園に入る前の頃。 お母さんは、僕を連れて近所の公園に行っていた。大きい公園で、子ども達も大勢遊んでいた。 その頃から僕は人と話すのが苦手だった。 自分の見た目が他の子と違う事は、幼いながら薄っすら気付いていた。その頃から、女の子のような見た目がとても嫌だった。 それでも両親は僕のことを可愛い可愛いと褒めてくれ、男の子の服に加え、時には男の子には可愛すぎる服も着せられた。 その日は、ちょうどピンクの服を着ていた。 髪は肩まで伸び、瞳も大きく、側から見れば女の子に見えただろう。 僕は子ども達の輪に入れず、ひっそりと砂場の隅でお山を作っていた。 近くでお母さんが見守ってくれていたが、御手洗に行くと言って少しの間だけ居なくなった。 ………そんな時、見た事もないお兄さんに声を掛けられた。 「こんにちは。お母さんがあっちで待ってるらしいから一緒に行こう?」 突然の声掛けに咄嗟に答えられず「ええっと……」と返事に迷っていると、 「大丈夫、お母さんにお願いされて来たんだ。急いでるみたいだったから早く行こう!」 そう言って僕の手を握り、早々に歩き出そうとするお兄さんに呆気に取られ、されるがままになっていた。 着いて行ってはダメな気がするけど、でもお母さんがそう言っているなら……と、お兄さんの言う通りにしようとしていると、 「ちょっと、待ちなよ」 と、僕の手を反対側から掴まれた。   そう、それが僕とアキとの出会いだったんだ。

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