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第4話

「おじさん、その子をどこに連れて行くつもり?警察呼ぶよ」 「お、おじ……!??俺まだ23なんだけどなぁ……。お母さんのところへ連れて行くだけだよ」 「じゃあ僕も着いて行くよ」 すると、男は急に突然慌てだした。 「いやいや、君は大丈夫だよ!」 …それを聞いて男の子は少し怒った顔をした。 「おじさん、その子の事どうするつもりだったの?」 男はそれまで笑顔で会話していたのに、突然怒りを顔に滲ませ、吐き捨てるように言った。 「…………あーあ、折角の計画が君のせいで台無しじゃないか。そうだよ、お母さんが呼んでるなんて、嘘だよ。この子とちょっと良い事しようとしただけ」 僕はその言葉に衝撃を受けた。 全部嘘だったなんて……… それを信じた僕はなんて間抜けなんだ…… 「やっと本当の事を話したね。僕はこの子をあんたに絶対渡さない!」 そう言って僕を男の視界に入らないよう、自分の背後へ隠した。 「ちっ……子どもが大人に、力で勝とうなんて無理に決まってるんだよ!」 男は、男の子の腕を掴み僕に近づいてきた。 あと少しで僕に触れる ……というところで、男が急に倒れた。 一瞬の出来事で何がなんだかわからなかった。 わからない事への恐怖から、咄嗟に男の子の背中にぎゅっと抱きついてしまった。 ……すると優しく頭を撫でてくれた。 「もう、大丈夫だよ。柔道の技をかけたんだ。当分は痛くて動けないと思う」 「えっ……もう、大丈夫??怖くない……?」 「うん、怖くない、怖くないよ」 そう言って僕の頭を撫でてくれた手がとても優しくて、僕はこの日の出来事を一度も忘れないだろうとその時確信した。 その後、戻ってきたお母さんに事情を説明してくれて、倒れていた男は警察に連れて行かれた。去り際に「覚えてろよ…」と言っていた気がするけど、聞き間違いだったのかもしれない。 その間、僕はずっと男の子の手を握っていた。 「あの……あり、がとう……。すごく怖かったけど、助けてくれて、ありがとう。」 「いいよ、困ってる人がいたら助けるのが当たり前でしょ。これからも何かあったら、いつでも僕を呼んで」 「ありがとう……ねぇ、名前……なんて呼べばいい?」 「僕は、千秋。みんなはアキって呼んでる。君の名前は?」 「………アキ……。ぼく…は、奈津…だよ」 「じゃあ、ナツとアキだ!季節みたいに僕たち繋がってるね!すごいや!」 「……!………本当だ、……うれしい…!」 アキとの出会いは、運命だと思った。 それから、アキと僕は度々会うようになり、家族ぐるみで仲良くなった。 僕にはアキが必要不可欠で、アキにとってもそういう存在でありたいと常に思っていた。

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