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第4話
プレイルームに入ると、希は青年を見下ろした。
「まずお前、バースは?」
「え、と、あの、α…」
「αぁ?でかいΩは見たことあるけど、小さいαとか見たことねえな。ほんとかよ」
「ほ、本当です!嘘だと思うなら見てください!」
そう言って青年が取り出した保険証を覗き込むと確かに「男 α Dom」と書かれていた。フェロモンを感じなくする薬を飲んでいるので鼻で確かめることは出来ないが、保険証を見せられては信じるほかない。ついでに彼が(ここに来ているのだから当然だが)成人であること、彼の名前が「井浦 霞 」だということも分かった。
「おい、こんなところで馬鹿正直に保険証見せるやついるかよ、っていうか霞とかぱっとしない名前だな」
「あ、はい…よく言われます…」
呆れた希に、霞は項垂れて保険証をしまった。
「フェアじゃないから俺も一応ちょっとは名乗るわ。俺はノゾミ。男、Ω、Sub。今日はよろしく」
「Ωなんですか!?…あっ、いえ、すみません…」
「いいよ。俺それなりにランク高いし、身を守るために柔道とかやらされてるからか、筋肉はあまりつかなかったけど背だけは伸びたんだよな」
「…僕なんかでいいんですか?」
「いや、ちょっと気になったんだよな。『そよ風』がどのくらいか」
「失礼ですね!」
本人としては本気で睨んだつもりなのだろう。しかし確かにそのグレアは弱かった。それこそそよ風のようだ。だが…。
「…やっぱりだ」
希は顔を押さえて苦笑しながら呟いた。
「え?」
「俺とプレイをしよう、霞」
あっけに取られる霞に、希はそう言った。
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