16 / 22

第16話

 ぱち、と目を覚ます。まだ夜は明けていない。  どうも最中に気絶してしまったようだ。体は綺麗になっていて、シーツも替えられていたし、服も着ていた。どうやら霞が後始末をしてくれたらしい。自分より小さいのに、迷惑をかけてしまった。後で謝らなければ。  腰がだるいが、歩けないほどではないようで安心した。まさかあんなに盛り上がってしまうとは思わなかった。いくら誤魔化したところで、希が産まれたての子鹿のようになっていたら何をしていたかなんてすぐにバレてしまうだろう。いや2人を同じ部屋に入れた時点で今更なのかもしれないが。  ちなみに発情期(ヒート)の間は精力が無尽蔵になるのは言うまでもないが、体力の回復も著しく、どんなに激しくしても比較的すぐに動けるようになる。αと性交する場合それ以上にお互いを求め合うのでΩが寝落ちすることも良くあることだが、それ以外の時間はほとんど繋がっているらしいと聞く。それでも発情期明けにほとんど支障は出ないらしい。さすがに希も発情期中にαと寝たことはない。  両親と話すことへの不安は別として、霞と番になることへの希の期待は大きかった。そして今、不安がなくなった分期待は増す一方だ。ようやくこのαのものになれるのだ。今までの発情期は、欠落を塞ぐものを求めても応える者はない虚しさを抱えながら、絶頂しても絶頂しても飢餓感が収まらない地獄のような日々だった。でもそれをこのαが埋めてくれるという確信がなぜか希にはあった。それは発情期の時だけではない。Domとしても、それから1人の男としても。常に霞は希を補う存在になってくれる。そして自分も、霞を補う存在になれるだろう。そう思えた。  とにかくまだ起きるには早い。希は霞に擦り寄るようにして二度寝を決め込むことにした。

ともだちにシェアしよう!