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楽園 14
キヨハラと恋人になった、のだと思う。
学校の行き帰りは一緒だったし、いつも河原の道でキスをした。
行きも帰りも。
でも。
でも。
それだけで。
キヨハラは受験生だし、タクミは部活は引退したけれど、バイトと修行を兼ねて、就職することになってる工房へ行ったり、技術の練習をしたり、まあ忙しかった。
夜寝る前にメールしたり。
おやすみを言うためだけに電話したり。
それは毎日してたけど。
でもそれだけだった。
いや、それはそれでめちゃくちゃ幸せだったのだけど。
そんな風にひと月も過ぎた頃。
タクミは不安になってきた。
キヨハラは相変わらず、女の子に人気があって。
キヨハラは同じ学校の子とは付き合わないというのは知られていたから、さすがにキヨハラに告白する子はもういなかったけれど、女の子達は遠巻きにキヨハラにきゃあきゃあ言ってたし、
タクミと二人出る門のそとに他校の女の子がキヨハラを待っていたりした。
中には前にキヨハラを迎えに来た子とかもいた。
「何しに来たの?帰って。二度と会わないって言ったよね」
キヨハラはものすごくツレなかった。
女の子達が青ざめる程の冷たさで。
キヨハラは気にせず女の子達を置き去りにし、そしてタクミに必死で説明する。
「あの子達とはもうなんともない」と。
「オレが好きなの。タクミだから」
キヨハラはタクミの手を握り、その目を覗き込みながらいう。
うん、タクミは頷く。
信じるしかない。
でも。
でも。
女の子達はみんな綺麗で。
しなやかで柔らかそうで。
キヨハラに似合ってて。
どうしてタクミなのか分からなくなる。
それに・・・。
キヨハラはタクミとキスしかしない。
メールや電話した後にキヨハラのキスや指とか考えながら、タクミはオナニーをしてしまう。
でも。
自分とキヨハラのセックスはイマイチ思いうかべられない。
だって。
あのキヨハラとタクミだ。
平凡な男子でしかないタクミだ。
あんな綺麗な女の子達とは全然違う。
タクミはボクサーだから小柄で細身でも、しっかり筋肉があるし、女の子達の身体とは程遠い。
顔だって。
まあ、普通に高校生男子だ。
男らしくても綺麗と言えてしまうキヨハラとも全然違う。
平凡な男子高校生以外、何者でもない。
キヨハラがあの女の子達としているところを考えた。
それは容易く想像できて、胸が痛くてたまらなくて。
でも。
女の子達をいやらしく抱いているキヨハラの姿を想像して、何度も何度もオナニーをしてしまった。
嫌だと思うのに。
想像の中のキヨハラはいやらしくて綺麗で、興奮して、辛かった。
女の子を意地悪にイかせるキヨハラを思って、辛くて泣いて、でも射精した。
キヨハラは。
キヨハラの好きは。
タクミの好きとは違うのかもしれない。
だってキスしかしない。
タクミは他の女の子を抱くキヨハラを想像して、オナニーしながら泣いてるのに。
タクミは。
キヨハラしか好きになったことがない。
キヨハラの好きが自分と同じなのか分からなくなった。
でも。
もう好きすぎて。
女の子としてるキヨハラを思って、辛くなりながら、でも。
またオナニーをすることをやめられなかった。
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