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楽園15
キヨハラ、は自分のことが好きなのだ、とタクミは信じてる。
だって優しい。
ずっとこちらを見てる目が優しい。
指もキスも・・・いや、キスは優しいだけではないけれど、とにかく優しい。
キスしてアソコをかたくしてるのはキヨハラも同じで、なんならキスしながらそれをタクミのソコに擦りつけて来たりするんだし。
キスしてる時のキヨハラは、優しいだけじゃなくて、強引で、いやらしくて、タクミをクタクタにする。
あんなキスをしてくるから、きっとキヨは自分のことが好きなのだ、とタクミは思う。
迎えに来てくれて、帰りも一緒で、夜電話くれて。
メッセージも送ってくれて。
来月は、受験の息抜きも兼ねて遊びに行こう、と言ってくれてる。
好きだって、何回も言ってくれてる。
でも。
どうしてこんなに不安なんだろう。
タクミは悩む。
そんな頃、仲良くキヨハラと2人で学校に来てるタクミを見た友達が、タクミを廊下の隅に呼び寄せた。
キヨハラとタクミが仲良くしているのに、タクミの周りはあまり良い顔をしていないのはわかってた。
そう、みんな理由は言わないのだけど。
友達がキヨハラに気づかれないよう、細心の注意を払っているのがわかる。
だって、キヨハラの行方を確かめている。
キヨハラが用事で先生に呼ばれていった隙に、タクミを廊下の端、教室の誰からも見られない場所に連れていったのだから。
「タクミ・・・もうはっきり言うけどさ、アイツは良くないよ」
友達は土でも噛んでるかのような顔で言った。
アイツが誰を表しているのかは当然わかった。
キヨハラだ。
みんな、キヨハラを腫れ物に触るみたいに扱う。
キヨハラが気にいらなかったり、誤解とかそういうものだとずっと思っていたけれど、キヨハラとタクミが仲良くなりはじめてからこれはちがうのではないかと思い始めた。
タクミとキヨハラが一緒にいるのを皆が「嫌がる」からだ。
どうして?
たしかにタクミもキヨハラは仲良くなるまでは、良いやつとは思ってなかった。
その態度にも問題があった。
でも。
でも。
何故みんなこんなにキヨハラを避ける?
そして何故、タクミに遠回しに、「アイツはなぁ」 みたいなことをいっていた?
具体的には何も言わないくせに。
でも。
今回は始めてだった。
はっきり言われた。
キヨハラと仲良くするな、と。
そこまでだったとはおもわなかった。
でもこれは良い機会だとも思った。
みんな、なんでキヨハラのことを誤解してるんだ?
そう、女の子達は遠巻きにきゃあきゃあ言う。
でも。
基本遠巻きだ。
どこか。
覚えもある。
少年達はキヨハラを絶対に受け入れない。
それは。
何かおかしい。
異様さがある。
明らかに少年達はキヨハラに対して何かある。
タクミが知らない何かが。
「なんでそんなことを言うんだよ」
タクミは聞いた。
憤りもあった。
大事な恋人なのだ。
悪く言われたくない。
「あのな、お前くらいだぞ。男子で知らないのは・・・」
友達は言いかけて止めた
顔が真っ青になっていた。
そして固まっている。
何かを見たのだ。
友達が見ているものを見ようと、タクミは振り返る。
そこにはいつの間にか教室から出ていたキヨハラが立っていた。
キヨハラは無表情にこちらを見ているだけだったのに。
友達は明らかに怯えていて。
でも。
たしかにキヨハラの目には何の感情の色も無くて。
何もかもか吸い込まれるみたいに冷たくて。
そんな目をしたキヨハラを、いやそんな目をした人を見た事が無かったから、タクミは冷たい氷で刺されたような不安を感じた。
でもそれは一瞬で、キヨハラは笑ってタクミ達の方へ近づいてきたから、タクミは自分が見たものを気の所為だと思った。
「オレは、【何も】言ってない!!」
友達は顔を強ばらせてキヨハラに言うと、走って逃げていく。
タクミはそれをおかしいとおもった。
思ったけれど。
キヨハラが珍しく学校でタクミに近寄ってくるのも、そう珍しいのに、でも。
タクミは。
笑顔でやってくるキヨハラに安心したのだ。
タクミは。
このことをあまり深く考えなかった。
「アイツなんて?オレについて何か言ってた
?」
キヨハラが詰問するように問い詰めるのも、でも、優しく笑っているから。
「別に何も・・・」
それでも友達に言われたことを誤魔化してしまったののは。
何か。
何か。
奇妙さがあった。
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