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楽園 22

その日、タクミは体調が悪かった。 授業は最期まで受けたが、やはりあまり良くない スパーリング大会まで時間はないが、ここはしっかり休むことにした。 ここでこじらせて練習出来なくなることの方が良くない。 家で、対策を研究しよう、そう決める。 ボクシングは囲碁や将棋に似ている競技でもある。 戦略は大切だ。 誰と当たるか分からないアマチュアトーナメントとは違い、今回は誰が試合の相手か分かってるのだからなおさらだ。 タクミは顧問と後輩に練習を休むことを伝えて、教室に帰る。 タクミはキヨハラが図書館に本を返しに行っていたのを知っていた。 教室にキヨハラか戻ってきてたら・・・久しぶりに一緒に帰れる。 タクミは思わず顔が緩んでしまう。 毎朝一緒に通学してても、メッセージの交換をしてても、それでも一緒に居られるならいたい。 そう言えば、キヨハラはやはり同じ教室にいても学校にいる時はタクミを今も遠ざける。 相変わらず誰も近寄らせない。 タクミが話しかけたなら、返事はしてくれるけれど、離れて欲しい、というのがわかる態度をとってくる。 「学校ではそっとしておいて欲しいんだ。お願い」 キヨハラにハッキリそうも言われてるのだ。 それはそれで寂しい。 何故? と聞いたら、はぐらかされるので、聞かれたくないのか? とさらに聞くと そうだ、とまで言われてる。 「いつか話すよ。だからお願い。学校では離れていて欲しい」 キヨハラのその言葉にタクミは引き下がるしか無かったのだ。 嫌がるキヨハラから理由を引き出しても。 タクミはそう思ったからだ。 話してくれるまで。 待つしかない、と。 でも、学校の行き帰りは別だ。 今日は練習を休むのだから、キヨハラと一緒に帰りたかった。 キヨハラといるのが好き。 キヨハラが優しく見てくれてる目が好き。 タクミの名前を呼ぶ声が好き。 そっと触れてくる、優しい指が好き。 タクミは急いで教室に向かう。 ちょうどキヨハラが教室に入るのがみえて。 喜んで、続いて教室に入ろうとしたタクミは、ドアのところで立ち止まった。 あの。 タクミと完全に距離をとった同級生と、キヨハラが睨みあうように立っていたからだ。 キヨハラは背中しか見えなかったけれど、同級生の顔は蒼白だった。 だけど。 同級生はキヨハラを睨みつけていた。

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