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楽園 23

「お前・・・をどうするつもりだ?」 前にキヨハラについてタクミに何か告げようとした、クラスメイトはキヨハラに蒼白な顔で言う。 タクミの苗字を口にしてた。 タクミに何か伝えようとして、その時キヨハラが現れて以来、クラスメイトはタクミを避けるようになった。 だが、あの時と同じくらい、そう、キヨハラが現れた時と同じくらい、真っ白な顔で、クラスメイトはキヨハラに詰問していた。 何故かキヨハラに怯えている、とわかる。 だが、今度はクラスメイトは逃げ出さなかった。 「・・・へえ?随分お節介だな」 キヨハラの声がした。 タクミは聞いたことがない、冷たい声だった。 そんな声を出せるのだ、と驚く程の。 「・・・はいいヤツだからな。みんな、【多分大丈夫だろう】ってごまかしてるけど、オレはお前と同じ中学だったからな。噂でしか知らないヤツらとは違う」 クラスメイトはそれでも1歩後ろに下がっていた。 キヨハラから圧力を感じているのだ。 キヨハラはどんな顔で、あの綺麗な優しい顔が今どんな表情でクラスメイトを見つめているのか、タクミには見えない。 「ああ、そういえば、オマエそうだったな・・・この学校に同じ中学のヤツがいたのを忘れてたよ」 その声の不穏さ。 いつもキヨハラの柔らかい声が、こんなにザラついた冷たく尖ったものになるなんて。 「また、始める気か?・・・を巻き込むな」 クラスメイトはまた1つ後ろに下がる。 いや、2歩、3歩。 その目が見開かれ、タクミはクラスメイトが見ているキヨハラが【恐ろしい】モノなのだけが分かる。 タクミは呆然とドアの前で立ち尽くす。 教室の中に入れない。 「・・・・・・なんでお前がタクミのことをそんなに気にする?【なんで】だ?【何故】お前が【タクミ】のことを気にかける?」 キヨハラの声は。 凶器のようだった。 クラスメイトが窓まで後ずさる。 というより、窓にぶつかり、それ以上下がれなくなった。 「タクミを【どうして】【お前】が【気にする】?」 キヨハラはゆっくり近寄っていく。 これ以上、壁と窓があるため、下がりようがないのにクラスメイトは下がろうとする。 そして 窓は空いていた。 だから、クラスメイトの背中は窓の外に出る。 まるで押されているかのように。 「【何故】だ?お前はタクミの【何】だ?」 キヨハラの声は大きくなかった。 でも、その声は圧力以外の何でもなかった。 キヨハラがゆっくり窓から背中をそらしているクラスメイトに近寄る。 手で押されているかのように、クラスメイトの背中がゆっくり窓の外へ倒れていく。 クラスメイトは恐怖に目を見開いていた。 タクミから見えるのはキヨハラ背中だけ。 でも、クラスメイトからは何が見えるのか。 その見える何かから逃げようとクラスメイトはしているのだ。 クラスメイトの身体が不安定なまでに後ろに反り返る。 本能的にキヨハラから逃げようとしているのだ。 身体が窓の外にたおれようとしてた。 タクミは我に返った。 ここは3階なのだ。 窓の外に倒れたら・・・。 「危ない!!」 タクミは叫んだ。 その瞬間。 教室に満ちていた、圧力のような何かが弾けた。 クラスメイトは窓の外ではなく、窓の傍にへたりこんだ。 「タクミ・・・?」 振り返ったキヨハラは。 いつもの優しいキヨハラだった。

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