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楽園 24

キヨハラがタクミへと振り返る いつもの優しい優しい綺麗なキヨハラの顔だ。 でも、キヨハラの背後で窓から床へと崩れるように座りこむクラスメイトは恐怖の表情をまだ顔に貼り付けていた。 タクミからは見えなかったキヨハラは。 一体どんな顔をしていたのか。 タクミは少しゾクリとしたものを感じた。 でも。 今、目の前にいるのは。 いつものキヨハラだ。 優しい優しい恋人。 タクミの大好きなキヨハラ。 「タクミ?どうした?練習に行くんじゃ無かったのか?」 キヨハラは尋ねてくる。 後ろでガクガク震えている同級生などいないかのように。 「今日は・・・体調が悪いから休むことにしたんだ。で、一緒に帰ろうと思って・・・」 タクミは何をどう聞けば、どうすれば良いのか分からないまま、キヨハラの質問に答える。 今。 ここにいるのは。 キヨハラだ。 いつもと変わらないキヨハラ。 でも。 ついさっき、ここで何があったのか、タクミには理解できない。 クラスメイトは窓から落ちようとしていた。 キヨハラに何を見たのか。 何からにげようとしたのか。 「そう。一緒に帰ろう」 キヨハラが嬉しそうな声で言う。 ほんとに嬉しそうで。 いつも通り普通で。 でも、その後ろで床にへたりこみ、震えているクラスメイトがいて。 タクミは困惑する。 「何?何があったんだ?」 タクミは聞かずにいられない。 キヨハラは少し眉をひそめた。 「大したことじゃない。そうだよね?」 キヨハラは振り返った。 そして優しい声でクラスメイトに同意を求めるように肩をすくめた。 「たいした、こと、じゃない」 クラスメイトは震えながらそう繰り返した。 キヨハラの言葉をそのまま。 「んなわけないだろ?」 タクミは言う。 どう見てもクラスメイトはおかしい。 「・・・・・・」 キヨハラは困ったように首を傾げた。 タクミは初めてキヨハラに疑問を持った。 ここにいる。 こいつは【何】だ? クラスメイトに何をした? だが、同時に。 キヨハラはキヨハラだった。 大事な恋人。 「キヨハラ・・・話をしよう」 タクミはキヨハラに手を伸ばした。 タクミはキヨハラを。 信じていたから。

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