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楽園 25
キヨハラは手を伸ばしたタクミを見つめる。
その目は飢えたような光と、驚きの両方がある。
キヨハラは自分へと伸ばされた手を何故か信じられないかのように見つめていて。
「キヨハラ!!」
タクミが名前を呼んで、やっとその手へと自分から腕を伸ばしていく。
タクミはキヨハラの手を握った。
しっかりと。
その手を掴んだまま、歩いていく。
キヨハラを引っ張るように。
キヨハラは黙ってそれに従う。
でも、教室を出る前にタクミは震えたまま崩れ落ちたクラスメイトの方へと目をやった。
キヨハラが出ていくことに安堵しているのがわかる。
「・・・大丈夫か?」
タクミの声にクラスメイトは泣きそうになりながら頷いた。
心配だが、今はキヨハラをクラスメイトから離した方が良いみたいだ、とタクミは判断した。
手を繋いだままのキヨハラが低く唸った。
獣のように。
鈍く目が光り、クラスメイトを睨みつける。
タクミの背中にゾクリとしたモノが走り抜けた。
タクミはどんな強い相手と戦う時も、こんなモノは感じたことがない。
これは違う。
もっと獣じみた何かと向かいあう時に感じるモノだ。
クラスメイトが見た物を一瞬タクミは理解した。
タクミは慌ててキヨハラを引っ張った。
クラスメイトをこれ以上怖がらせるわけにはいかなかったからだ。
キヨハラは大人しくついてきた。
タクミは屋上に向かった。
二人きりで話したかったから。
屋上にあがり、そして手を引いていたキヨハラへと向かいあった。
そこで向かい合うキヨハラは。
いつものように。
優しくて綺麗な。
キヨハラだった。
大好きな恋人。
大事なキヨハラ。
「キヨハラ・・・大好きだ」
まずはそこから言った。
片手で繋いでいた手にもう片方を重ねる。
キヨハラの右手を両手で握る。
タクミの身体を甘く感じさせる手。
タクミの頬を優しく撫でる掌。
タクミの涙を何度も拭った指。
好きで好きでたまらないキヨハラの手に、タクミはキスをした。
この指に喘がさせられ、この指で愛撫され、この指に感じた。
その指にキスするのはタクミにはセックス同然でもあった。
キヨハラの目が欲望に滾るのがわかる。
自分も、そうだとタクミは理解している。
でも。
今は
話をする時間だった。
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