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楽園 42

「キヨハラ・・・お前は色々間違った。でも。お前はお前の父親と同じじゃない」 タクミは言った。 キヨハラがした事は悪いことだ。 人を支配した。 だが。 キヨハラは知らなかった。 支配によって引き起こされる狂気はコントロールなど出来ないのだと。 人間を壊すことしか出来ない。 支配は何も生み出さないのだ。 人間が破壊されていくのを眺めて楽しめる、もっとも狂った人間だけが、支配を楽しむことができる。 キヨハラの父親のように。 タクミはそれが間違っていると、本能的に知っていた。 タクミは母親のために強がり弱いところを見せて来なかった。 でもそれは母親の愛を求めるためではなかった。 母親が自分を愛していると知っていたからこそだ。 キヨハラのために強い男になりたかった。 それはキヨハラに好きになって貰う為じゃなく、キヨハラが好きだからだ。 その強がりは自分のためで、相手から何かを奪うものなどではない。 だが支配は。 底なし沼に、価値あるものを投げ捨てさせる行為だ。 そんなもの。 絶対にダメだ。 「お前は。みんなに好かれたかっただけだ。そのやり方を知らなかっただけだ」 タクミは悲しい気持ちになる。 キヨハラは支配しか見たことが無かったから。 だから、好かれる代わりに支配という底なし沼になってしまった。 こんなに魅力的な男が。 好かれる代わりに支配しか出来なかったのだ。 でも、その後、キヨハラは禁じていた。 誰かに好かれること、誰かを好きになること。 それは。 酷い人間ならば絶対にしないことだった。 「した事に責任はある。それはオレもお前と一緒にどうすれば良いのか考えるよ・・・でも。お前はお前の父親とは違う。・・・本当のお前は良いヤツなんだよ、キヨハラ・・・」 タクミは言った。 キヨハラが低く呻いた。 泣いているのだ。 抱きしめたタクミの胸の中で。 タクミが座ったキヨハラを抱きしめるのは膝立ちにならなければならなかったけれど、タクミはキヨハラをしっかり抱きしめる。 その大きな身体を。 離さないでいると決める。 キヨハラには。 自分が必要なのだと思った。 「好きだ・・・タクミ・・・好きなんだ・・・」 苦しげに言うから。 苦しんだと分かるから。 それでも。 タクミといたいのだとわかるから。 「オレがいる。オレはお前を殴ってでも二度と間違えさせない」 タクミは言いきった。 言い切ってしまって良いのか。 それは無責任なのかもしれない。 だが、タクミはそれに全力を尽くすつもりだった。 キヨハラを1人にしない。 支配なんてものは。 支配者という自分しかいないのだ。 そんなところにキヨハラを行かせるつもりはなかった。 その日。 声を出して泣くキヨハラを。 抱きしめたのはタクミだった。 ずっとずっと。 泣き止むまで。

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