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楽園 44
タクミのスパーリング大会まではあっという間だった。
キヨハラとは毎日通話やメッセージの交換はしていた。
タクミは学校では自分を避けるキヨハラも受け入れていた。
キヨハラには人と関わらないことが、自分がした事への責任なのだと分かったから、今はそれで良いと思った。
この先どうするかはまたキヨハラと考えて行きたい。
キヨハラにされたことは考えないようにした。
あの熱い、いやらしい指のことは。
試合どころでは無くなって、またずっと自慰に狂いそうになるからだ。
ひたすら練習に打ち込み、対戦相手の研究を頑張った。
自分の闘い方をこんな短期間で変えることは出来ないが、同じやり方では同じように負けてしまう。
何か考え方無ければならなかった。
ダメだったなら、別のやり方。
負けを克服するってそういうことだ。
タクミは何かを学びつつあった。
試合が終わればキヨハラに会える。
だからこそ、勝ちたかった。
「会いたいよ」
タクミのストレートな言葉にキヨハラが電話の向こうで黙りこむ。
「・・・オレも」
そして、小さな声が返ってくる。
そう言うことにキヨハラがどれだけ勇気がいるのかがタクミには分かっている。
タクミを手放せないくせに、タクミに自分は相応しくないと怯えている。
「おやすみ。勉強頑張ってな」
タクミは言う。
キヨハラは大学に入り、そこを卒業し、あの家と縁を切る。
でもキヨハラは1人じゃない。
タクミがいる。
「タクミも練習頑張って」
キヨハラの声はいつも通り優しい。
タクミはだから頑張れる。
二人で進む。
進みたい。
タクミはそれを信じていた。
そして、その為にも。
試合に勝ちたかった。
そして、試合の日。
タクミの前に現れたのはキヨハラの父親だった。
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