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楽園 59
見つめられているだけなのに。
タクミの身体は熱を持ち、ペニスはひくつき、涎を垂らした。
キヨハラの視線だけでそうなってしまう。
怖くて自分では触ることが出来なかった後ろの穴の中が、ズクンと疼いた。
そこを使ったことなどないのに。
「キヨハラ・・・キヨハラ・・・」
タクミは視線に耐えかねて叫ぶ。
ガチガチに痛むほど勃起したペニスも、なぜか熱くなる腹の中も。
キヨハラで無いとどうにもならないと知っていたから。
だけどキヨハラは躊躇った。
タクミのペニスへと伸ばした腕を止め、顔を覆って、首を振る。
タクミはそれに絶望した。
無理なのか、と思ったからだ。
タクミの不安。
タクミはキヨハラが自分が好きであることを疑ったことはない。
キヨハラが自分をもとめてくれていることも。
キヨハラの隣りにいるために、タクミは努力も惜しまない。
キヨハラの手を離さない。
そう決めている。
でも。
でも。
それがセックスとなると別だった。
キヨハラは男を抱いたことがない。
それをタクミは知っていた。
キヨハラはタクミを愛している。
そこは信じてる。
でも。
本当にタクミを抱けるのか。
実際に男の身体を前にして、はタクミが考えないようにしていた疑問だった。
タクミの中にもあったから。
本当にキヨハラと出来るのか、が。
手放さない、愛している、のは絶対だった。
それは肉体だけの問題ではなかったからだ。
キヨハラはタクミがキヨハラとセックス出来ないと言っても、タクミを離しはしないだろうことは分かってた。
もちろんタクミもセックスだけの問題ではなかった。
離すつもりなどお互いない。
でも、タクミは。
タクミの身体はキヨハラのことを今浅ましい程に欲しがっていた。
使ったことの無い穴や腹の奥まで疼かせて。
でも。
でも。
キヨハラは。
キヨハラはそうでは無いのかもしれない。
タクミのそそり立つペニスが、キヨハラを欲しがり濡れているのに、引いてしまったのかもしれない。
身体は無理なのかもしれない。
欲しいのはタクミの心だけなのかも。
セックスするのは、実際目にしたら無理だったのかもしれない。
キヨハラが抱いてきた女達とタクミの身体はあまりにも違った。
タクミは見られてる以上の羞恥を感じた。
興奮しているのが自分だけなのかと考えたなら、殴られたように頭が痛くなった。
恥ずかして、恥ずかしくて泣いてしまった。
「違う、違うから・・・」
キヨハラの焦った声に、タクミは怒りさえ感じた。
できないのは仕方ない。
だってキヨハラは男を抱いたことがない。
躊躇してしまっても仕方ない。
仕方ない、でも。
タクミの方はこんなにもキヨハラが欲しくて仕方ないのだ。
キヨハラとセックスかしたくてたまらないのだ。
その落差が切なすぎた。
「嫌なら出ていけ!!」
キヨハラの家なのにタクミは叫ぶ。
キヨハラの視線にいたくなかった。
こんなに抱かれたがっている自分など見せたくなかった。
「違うから・・・違うから・・」
キヨハラの困ったような声がした。
タクミはキヨハラの優しい指が涙をぬぐおうするのを、手を叩き落として振り払う。
泣いてキヨハラの身体を突き放そうとしたタクミをキヨハラは抱きしめて離さない。
「ビビったんだよ・・・。好きな子の裸に。オレだって、好きな子とするのは・・・初めてなんだよ」
耳元で困ったように囁かれた。
タクミはその言葉に暴れるのをやめた。
「本当?」
タクミは聞く。
「本当」
キヨハラが言う。
「オレとしたい?」
「お前とだけしかしたくない」
それでもう、十分だった。
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