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第3話

 太郎は反射的に胸を押さえた。氷の(やいば)で刺し貫かれたような衝撃が全身を走り抜けて、よろめく。男根を(かたど)ったオブジェにしがみつくと、無意識のうちに頬ずりしながら訊いた。 「あっ、あの別嬪さんは、ワッチュ・ヒー・ネーム?」 「乙夜(おとや)。竜宮楼の稼ぎ頭なんだけど、が好きでお高くとまってるから、ほっといてあげな」  と、タイラが聞こえよがしに切って捨てた。ヒラリンが後を引き取る(てい)で昆布の巻き尺をしならせる。 「適性検査を兼ねて太郎ちゃんの歓迎会のはじまり、はじまりぃ。最初はみんな大好き、持ち物検査から」  持ち物検査、と鸚鵡返(おうむがえ)しに呟いた。首をかしげがちに、背中にくくりつけてきた愛用の釣竿を外す。腰蓑(こしみの)も取り去り、帯からぶら下げた魚籠(びく)とひとまとめに床に置いた。 「ぷぷぷ。太郎ちゃんってば天然入ってる。持ち物といったら股間のちょんまげだよ?」  ほーちゃんが、ぐぐぐと右手を上げ下げし、それで一と一が結びついた。広間の中央にステージが設けられている。駆けあがり、殊更ゆっくりと着物を脱ぎ去って、焦らしに焦らしたすえに(ふんどし)もほどいた。そして爪先立ちで一回転する。  ぷりっぷりでスベスベの、自慢の桃尻をご覧あれ。品定めするような視線がねっとりと股ぐらにそそがれると、Y字バランスで応えたい衝動に駆られて、さっそく実行に移した。ムスコにしても怖気づくどころか社交性を発揮して「こんにちは」と、そそり立つ。 「攻めてよし、受けてよしの五寸強。秒で勃つのも高ポイントで、花丸合格ぅ」  ヒラリンが昆布の巻き尺でチン長を測り、 「子種の貯蔵量に期待大の、およそ十(もんめ)」  タイラが甘エビをひとつかみ天秤の片方の皿に、もう片方の皿にを載せて目盛りを読みあげると、 「元気溌溂で、食べちゃいたあい」  ほーちゃんが舌なめずりをした。  ちなみに一寸は約三・〇三センチメートル。同じく一匁は三・七五グラムで、現在でも真珠の目方を量る単位として用いられている。 「童貞おちんぽを味見したい人!」  タイラがそう言い終わらないうちに彼のものも含めて手が三本、一斉にあがった。希望者が殺到した場合は、負けても恨みっこなしの〝せくすぃジャンケン〟で決めるに限る。  すなわち公平を期して乳首がグー、花茎がチョキ、玉門がパーを意味する方法で。いかに素早く学ランの前をはだけ、あるいはズボンをずり下ろし、もしくは双丘をがばっと開いてみせるか、それが勝負の鍵を握る。

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