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第5話

 男娼の心得その一、持久力を養うべし。ご奉仕するほうが好き♥ という客も中にはいて、ただし、むしゃぶりつかれたとたん昇りつめるザマでは話にならない。  暴発防止には地道な努力の積み重ねが大切なのだ。なお、スパルタコースでは冷水と熱湯を交互にくぐらせてイチモツを至高の一本へと育てあげる訓練法があると、もっぱらの噂だ。 「おひょ……あん、あへ……ん、んっ!」  まさか夢心地の初尺八が男娼デビューへ向けての第一歩だとは、露知らず。太郎は竿とサオをしならせてメカジキと格闘し、ついに釣りあげたときのことを思い出してムスコを励まし、粘りに粘った。  船底を踏みしめるように、四肢に力を込めて爆ぜる寸前で懸命に持ちこたえる。かけることの、数回。とはいえ、熟練の舌さばきの前では無駄な抵抗だ。ちろちろ、ねちねちと舌が這い回るにつれて、脳みそが蕩けるような快感の波にさらわれる。 「あん、あん……無理、もう無理、先っぽが焼ける……おさらばしまぁすっ!」  と、のたうちつつ腰を突きあげる。あ・うんの呼吸でカリにいっそう舌が巻きついて、とどめを刺す。栓が弾け飛んで、どぴゅっ! と噴きあげた。 「う~ん、童貞おちんぽの子種はさすがに鮮度抜群。まったりと濃厚で、磯の風味がこたえられなくて、星を進呈しちゃう」 「ほーちゃんばっかり、ズルいぞ」 「そうだ、そうだ、喜びは分かち合おうよ」  代わるがわるベロチューを交わして〝太郎の味〟をシェアするさまは、なまめかしくも微笑ましい。すさまじい威力で勃起中枢を刺激した結果、 「ムスコよ、ぅおお、グレート……!」  しょぼんとするどころか、準備運動が終わったと言いたげに頭をもたげる。おまけにヒマワリが咲き匂うかのごとく、股間にかぶせた掌からはみ出す勢いだ。  ひと晩に手コキ六回が太郎の自己最高記録。ふつふつと下腹(したばら)がたぎるあたり、記録を塗り替えるのは時間の問題かも。  だが物足りない。村の子どもが総出の陣取り合戦で、誰かがイチ抜けたをすると、シラけた空気が流れるのと一緒だ。  太郎は思った。綺麗な貝殻を紐に通してこしらえたチン飾りを持ってきていれば──と。お近づきの印と称して乙夜にプレゼントすれば、好印象を与えられたかもしれない。ひいては国宝級に素晴らしい、せくすぃジャンケンにだって嬉々として参加してくれたかもしれない──希望的観測もいいところだが。  肝心の乙夜ときたらエロエロしくじゃれ合うのをよそに、マグロの骨に弦を張った竪琴(たてごと)を爪弾いて、の壁を築いている。その、つれない素振りが太郎を惹きつけてやまない。優美な姿態そのまま、花茎のほうも﨟長(ろうた)けて秘処に彩りを添えるのだろう。 「そっ、そこの、ツンツンした、きみ……」  思い切って話しかけたまではよかったが、口ごもる。乙夜くんの、おちんちんを拝ませてちょうだい──。初対面の挨拶としては()()の、顰蹙もの。  せめて微笑んでくれないだろうか。能面さながら表情のとぼしい顔に笑みが()かれたら、きっと大漁旗を翻して村に帰るときの何百倍もウキウキするに違いない。うん、絶対そうだ。

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