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第7話

  「ぬ、おおおおおおおっ!」  大殿筋が浮き出したぶん尻たぶがへこむ。武者震いをするように、ふぐりが揺れる。肉の環が極限まで狭まり、張り形をがっちり摑んでもはや梃子でも動かない。  牡蠣(かき)も真っ向から受けて立つ。岩にへばりついて蓋をしっかり閉じるように、ぷりぷりした身で張り形を押さえ込む。 「ん、ふぅ、ん、ふぅ……っ!」  太郎VS牡蠣のもようを生配信していたら、チャンネルの登録者数はうなぎのぼりに増えていたこと請け合いだ。  一進一退の攻防が繰り広げられるにつれて精悍な顔はまだらに赤らみ、汗にまみれていく。人類の名誉にかけてコテンパンにやっつけてやれ、と鼓舞するようにムスコが反り返る。 「わっせ、わっせ、太郎勝て、牡蠣勝て」  チアリーダーが打ち振るのがポンポンなら、三人組が振り回すのは脱ぎたての下穿きだ。ボイラーに石炭を()べるに等しく、太郎はおろか、牡蠣までいっそう勇み立つ。  乱痴気騒ぎが癇にさわる、とばかりに乙夜は窓辺へと歩き去った。それでいて太郎の一挙手一投足に神経を研ぎ澄ませ、おまえは悩みの種だ、と朱唇が紡ぐ。  実は、かつて感じたことがないを持て余していた。一対を成す相手と巡り合うと世界が薔薇色に染まったように感じられる、という。  太郎と見つめ合ったさい限りなくそれに近い現象が起きたのは、どうして? 嬉々として三人組の玩具になり下がるさまに、無性に苛つく理由は何に()る?   もやもやして落ち着かないまま竪琴をかき鳴らす。その調べは熱情にあふれて、本人が口下手なのを補って饒舌(じょうぜつ)だ。亀のペテンにかかって現れた、僕の心をかき乱す罪なやつ♪  一方、ケツ圧診断の舞台となったこちら側では、竜宮楼の語り草になる熱戦がますますヒートアップしていた。  綱引きとは言い得て妙で、二本の張り形は紐で結ばれている。張り形をへし折りかねないほど内壁が窄まった拍子に、牡蠣がふらついた(ように見えた)。なかば台からずり落ち、だが、その台にほどこされたレリーフに殻の凹凸(おうとつ)がすっぽり嵌まったおかげで踏みとどまった。 「はぁああ、ん……っ!」  太郎が優勢に立つのにともなって紐がたるんだ。それが裏目に出た。バットの芯で剛速球を捉えたように、張り形が(さね)をつつきのめすかたちになったのだ。 「むふん、今の刺激をワン・モア・プリーズ」  牡蠣がにたりと嗤った(ように見えたパート2)。そして、くいくいと紐を引っぱりながらずり上がれば、張り形が再び実を狙い撃ち♥ 「ふぉおお……んっ、あ、もっと……!」 「おおっと、これは偶然か、確信犯なのか。太郎ちゃんのスウィートスポットに波状攻撃を仕かけるとは牡蠣の身で天晴れ……ああん!」  実況はよがり声に溶ける。三人組は、もらい泣きの親戚にあたる、もらい欲情するあまり火照った玉門に指を入れ合っているのだから──ぬっちょぬっちょ、と。

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