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第8話

 牡蠣(かき)が身じろぎするたび甘やかな振動が例のに響いて、(なか)全体がいななくようだ。しかも常日ごろ内壁のうねりぐあいの向上に努めてきたのが災いして、張り形を最奥へといざない、貪る。  一転して敗色濃厚だ。劣勢を跳ね返すより快感に浸りたいのは山々なれど、二枚貝ごときに屈するのは、くやしい。 「ふう……ん、く、く……」  四つん這いになって腰を振りたてる床に、いかがわしい雫がしたたり落ちて、ガッデムと綴る。勝負の行方を見届けようと、亀を先頭に、ほかの男娼たちも集まってきた。  崩落を迎える恐れが強まり、だがイッちゃっても負け、張り形がすっぽ抜けても負け。野次馬が詰めかけているなかで、ポンコツ野郎の烙印を押されたうえ、つまみ出されるのは御免こうむりたい。何しろ竜宮楼は海の底。すごすごと村に変える羽目に陥ったら、二度と乙夜に会えないだろう……。 「牡蠣なんかに白旗を掲げたら金輪際、口をきいてあげないんだから!」  ざわめきをかき消して朗々と響いた声の(ぬし)は、乙夜だ。宝箱にしまって厳重に鍵をかけておいた真情をうっかり吐露した。いわゆるツンデレを地でいき、発破をかけた当の本人が一番驚いた様子で立ち尽くす。  太郎は猛烈に感動した。それは、それは! ムスコがうれし蜜にまみれるほどの歓喜に打ち震えた。そうだ、乙夜の前で無様な負け方をさらしたが最後、自分への罰として玉門に石ころでも詰め込むようだ。全身に……とりわけ後孔に力がみなぎる。  紐がピンと伸び、空気が張りつめた。果たして処男穴の収縮力が牡蠣を圧倒するのか、それとも過去に数多(あまた)の挑戦者をマットに沈めた貝柱に軍配があがるのか。 「ふ、んがぁああああああっ!」  キュウリはおろかゴーヤをみじん切りにしてのける締めつけに遭って、張り形がゆがむ。ここを先途と腰をくねらせると、ピキッ! 恐ろしく硬い殻にひびが入った。  どよめきが起こり、その場に集いし花茎が一斉に跳ね踊るさまは壮観だ。生配信の視聴者たちの肉棒という肉棒がエントリーする、もっこり杯が開催されていたら、無念の暴発にリタイアする選手が続出していたに違いない。  死力を尽くして牡蠣をねじ伏せにかかる太郎は、海神(わたつみ)の化身のごとく広間に君臨した。ひび割れた部分が蜘蛛の巣状に広がるにしたがって殻の欠けらが剝がれ落ち、恥ずかしい、というふうに縮こまった身が見え隠れしはじめた。 「手こずっているふりで、牡蠣がジタバタしてを刺激してくる感触を愉しんでいるの? 浅ましいな、引導を渡しておやりよ」  乙夜がせせら笑いを交えて、そのくせ祈る形に両手を組んで再び声を放った。 「この勝利を、きみに捧げる!」  と、太郎が勝鬨(かちどき)をあげると同時に、とうとう殻が真っ二つに割れた。  ぬっぽーん! と張り形が飛び出し、けん玉のを受け止めるように、すばやく落下地点に走ったヒラリンの玉門にすっぽり収まった。ほーちゃんとタイラが、抜け駆け禁止とプンスカ、プンスカ、ヒラリンをくすぐりたおしたのは、さておいて。

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