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第12話

「窒息するってば! もごもご……」  やんわりと押しのけられても、なおも海ぶどうで朱唇を割る。ふぐりで子種がひしめき合い、(ふんどし)の前が隆起するにつれて、眉宇に決意がみなぎっていく。  太郎は、拳で胸を叩いてみせた。 「わかった、今すぐ乙夜をさらって逃げる。きみなしの人生は、味噌を入れ忘れた味噌汁も同然だ」  男娼暮らしですさんだ心を癒やすものは至純の愛だ、と歴史が証明している(かもしれない)。黒髪が扇形に広がってバサバサと(くう)を切り裂くのは、感動の嵐が吹き荒れているがゆえだ。乙夜はべそをかく寸前のようにゆがんだ顔で、うそぶいた。 「おまえに追っ手から僕を護りとおす器量があるとは思えないけれど、逃避行と洒落込むにやぶさかじゃないよ」  くちづけを交わすのにうってつけ、というより、そうするしかない流れだ。初・接・吻の三文字に羽が生えて飛び交うようななか、ちょこんと唇が重なった。  折も折、複数の足音がこだました。ほーちゃん、タイラ、ヒラリンが団子になって珊瑚の森を抜けるが早いか、乙夜を突きのけて太郎を囲む。 「太郎ちゃん、見ーっけ!」 「広間に戻らないと減点、十だ」 「うれし恥ずかし楽しい二次審査のはじまりぃ、イェ~イ」 「亀も含めてみんなグルで、俺を罠にはめて、客をとらせる魂胆だったんだな。神妙にしろ、ネタはあがってるんだ」 「あれあれ、牡蠣(かき)とタイマン張っている間中、ガマン汁がだらだらだったのは、誰かなあ? ハメられるのは大好きな太郎ちゃん、駄々をこねていないで気持ちいいことしようね」  悪魔の囁きに理性が吹き飛び、恋情のほうは双六でいうと〝一回休み〟のマスに止まる。うっかり、ぽわんとなった隙に乗じて羽交い絞めに引きずっていかれた。  を白砂に書きまくる、という淋しげな姿が頭にこびりついて罪悪感に苛まれても、下半身は無節操且つ、きかん坊なのだ。  二次審査はタコの脚を太郎の胸に這わせて、乳首を吸盤でムッ、チュウウウウ! で幕を開けた。タコは知能が高い。さらに並外れた柔軟性を生かして、役どころを巧みにこなしてのけたのだ。  にゅるにゅる蠢く脚に向かって、この的を射貫くと賞品を進呈と、そそのかすように玉門がひくつく。ふだんは乳暈(にゅううん)になかば埋もれている粒がしこり、雪景色に鮮やかな南天の実のごとく色づくのにともなって、穂先が褌からはみ出す。 「吸ってる、吸ってる、ふたついっぺんに乳首を吸ってる、ああ……っ!」 「太郎ちゃんってば、特訓する必要がないくらいノリノリぃ。乳首攻めだけでイッちゃう体質かもで、おめでとう」  きゃぴきゃぴと教育係を務める三人組は、すでに奥義を極めていた。無垢な乳首が熟していく様子を観察しているうちに、そういう構造のボタンのように六つの乳首も仲よくせり出す。

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