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第14話

 らしくもなく太郎が心の葛藤に苦しんでいる(かん)に、三人組は汽車ポッポ音頭に合わせて出発した。ずっちょ、ずっちょ、と太郎の周りをぐるぐる回る。やせ我慢を張るのは躰に毒、と諭すように。 「審査を放棄すると楼主の逆鱗に触れて、おちんぽをウニの棘でブスッ、ブスッ! だよ。四両目に連なるのもだから、ほら」  タイラが眼前で花びらをめくりながら促す。とたんに喜び勇んでムスコが跳ねた。チンチンカモカモなあそこに、ほんのちょっぴり先っぽをめり込ませるぶんには、事故で通らないかしらん?  太郎は勢いよく立ちあがった。誘惑に屈する(なか)れと、しゃがんだ。再び立ちあがった。極太の竹を(たわ)めるように無理やり膝を折り曲げて、しゃがんだ。 「へっぽこ、ヘタレ、ハリボテちんぽ!」  ブーイングを浴び、下腹(したばら)めがけて手裏剣のようにヒトデが飛んでくる。華麗な竿さばきで大物を釣りあげる要領で、ひょいひょい打ち返したのが連結部に張りついた。 「あっ、あっ、星型のギザギザが入口をくすぐるぅ……!」  ぬっぽん、と連結器──花茎が抜け落ちたはずみに三人組はあられもなく尻餅をついた。 眼福を得、併せて恋心が沸騰する形になってムスコが爆ぜた。 「男娼界のてっぺんを獲りにいける期待の新星(誰もそこまでは褒めていない)なんて、おだてても無駄だ。俺は一穴および一棒主義を貫くと決めたんだー!」    満天下に轟けとばかりに叫んで、先ほどの四阿(あずまや)へ急ぐ。乙夜、乙夜、後生だから待っていてくれ。二度とブレない、純愛路線に舵を切る、と誓いを新たにした俺を信じてほしい。この将来(さき)、大しけの海で難破するほどの困難にみまわれようとも、きみとラブラブ一色で添い遂げてみせる。  夜光虫の一団が持ち場につけば、海の底にあって竜宮楼はいちだんときらびやかだ。いつ、口あけの客が登楼してもおかしくない時刻だ。  焦り、だが珊瑚の森は迷路と化して行く手を阻む。約束を反故(ほご)にして三人組と戯れていた、不実さをなじるように。  つぎつぎと敵が襲ってくるRPGさながら、円柱状にまとまったイワシの大群に巻き込まれた。あっぷあっぷともがきながらも、太郎はひた走りに走りつづけた。おにいさん遊んでいって、とクラゲの夜鷹がしなだれかかってきても、真摯な想いを武器に突き進む。  やがて珊瑚の森がしぶしぶという(てい)で左右に分かれた先に、四阿が現れた。 「乙夜―!」  ()ねさらせシッシッ、と向こうを向いたっきりの背中が語る。ほっそりした肢体が発するオーラは忿怒(ふんぬ)の紅蓮。  ヤベ、ほとぼりが冷めるまで待って、それから出直してきたほうが正解っぽい。ふつうの神経の持ち主ならそうと察して、即座に退散する場面だ。

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