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第23話:どこかで会いました?
打ち合わせが終わり、カードを一時停止する為にカード会社に片っ端から電話をした。再発行手続きやら、支払い方法の変更やらでほんと大変だった。
今時スマホで買い物ができる時代でほんとに良かったと思う。じゃなきゃどうなってたか。
半田さんはあんなだし、交番に財布が届けられたとしても俺に教えてくれるかどうか。流石に警官なんだからその辺はちゃんとしてくれると信じたいけど。
大和にまた近々飲みに誘われたけど、財布が無くなった事と例のフードの男の話をすると、あいつはとても心配してくれた。
なんか半田さんの後だと大和が神に思える。
そして大和とのやり取りには続きがあった。最近この近辺で盗難や詐欺、その他事件などが増えているとの事。
今日も大和は事件の応援に駆り出されたらしく、この後しばらく連絡が取りづらくなると送られてきていた。
「なんか、物騒な世の中になったよな〜」
殺人事件や暴力事件もニュースで見る事が多くなった。
不景気は続いているし、商店街や大通りではデモ隊が騒いでいる事もしょっちゅうだ。
そう考えるとある意味財布くらいで済んで良かったのかもしれない。
あれが通り魔とかだったらって考えると恐ろしい。
「腹へったぁ…」
ぎゅるる、と腹が鳴った。
財布落としたせいで昼もバタバタしてたし、昼飯もろくに食べてなかったからここらでコンビニでも寄ろうと思い、とあるコンビニに入る。
この後はもう直帰するから、夜飯も含めて買い物でもしておこう。
「水と…あと…」
酒を買おうとドリンクが陳列されている場所に向かい、選んでいる時だ。
「あっ」
「っと、すみませーーげっ」
飲み物が置かれている冷蔵庫を開けようとした時、誰かと同時に開けようとしてしまい思わず手が止まる。
すみません、と手を引き相手を見ると、どこかで会った事のあるような見覚えのある顔…なんて思っていると相手もどうやら俺の事を知っているような反応を見せる。
と言うか絶対会った事ある。「げっ」って言ったし。
「あの…どこかで…?」
「あ、ああ…あはは…すみません〜。俺ですよ、俺」
そう言い自分を指差す男。
金髪のセンター分けで、耳と口にピアスが開いている。殴られたのかぶつけたのか、少し目元があざになって腫れていた。
こんな若い男の知り合い、いたっけな?と頭の中を巡らせる。
「ほら、バーでお兄さんが泥酔してた時の」
「ああ!」
首を傾げていると、そう言われ記憶が蘇る。
「あのバーテン⁉︎」
「あはは…うす」
そうだ。大和と知り合った飲み屋にいたバーテンだ。
店ん中暗かったし服も制服じゃなくてスエットズボンにTシャツで印象全然違うくて気付かなかった。
「そ、その節はどうも…」
「いえいえ、あの後大丈夫でした?」
蘇るあの日の夜の事。汗が滝のように流れ始める。
「まぁ…おかげさまで」
「あははっ、もう一人のお兄さんが頼もしそうだったんで心配はしてなかったですけどね〜」
「あはは…」
あの後何があったかなんて知りもしないこのバーテンはにこやかに笑い始める。そんなバーテンを前に俺は引き攣っている事だろう。
「と言うか、その目どうしたの?」
「え?ああちょっと女絡みで揉めて」
「え?そっちこそ大丈夫かよ」
「まぁよくあるんで。こんなの平気ですよ」
「へぇ…え、年いくつ?」
「21っす」
「って事は…大学生?」
まあそんな感じだと言って指で頬を掻くバーテン。
女絡みで、と言ったけど彼女に殴られでもしたのだろうか。
にしても痛そう。今の若者の付き合いって過激なのかな。
「じゃ、俺はこれで…また店にも来てくださいね〜」
そう言ってレジに向かおうとするバーテン。
「あ!そういや名前聞いてなかった」
「えっ?」
その時見せたバーテンの顔は少し驚いているように見えた。
「あー。ヒカルっす」
「ヒカルかぁ…」
言われてみればそんな名前の名札つけてたかも。
「俺今財布なくして金欠だけど、また近々行くわ!」
「あっははは、それは災難でしたね〜」
またよろしくお願いしますと俺に頭を下げたバーテンのヒカル。
世の中ってほんと狭いなとしみじみ思いながら俺も買い物を済ませて家へと帰宅した。
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