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第24話:クソみたいな人生(笹)

2日前、彼女に呼び出され、別れ話をされた挙句に彼女が連れて来た連れの男3人に俺はボコられた。 (彼女と言うか…俺がヒモしてた女だけど) それもこれも俺が三股してるってバレたのが悪いんだけどよ。残りふたりの女にも最近見切りを付けられてしまい、いよいよ食いぶちが無くなってしまった。 一ヶ月前からバーでバイトを始めたのは良いものの、大して金になるわけじゃないし、何より働きたくねぇ。 帰る家も失い、手持ちの金で満喫生活を過ごしていたが金も残りわずか。 俺、笹部光(ささべこう)、御年21歳。 家なし金なし。あると言えばフルボッコされても対してダメージ食らってない頑丈な体と精神力。あと、女に気に入られるためのこのナイスガイな外見と懐に入る為の愛嬌とコミュ力。そしてそれを会得するまでに生きる術として磨いたスリの技術くらいだ。 昨夜、別の女の家に行ってみたが新しい男が出来ていたので、結局寄生できないままどうしようかとその辺を歩いていた。 そしたら目の前からサラリーマンが歩いて来たから、ちょっと昔の悪い癖が出てしまった。 金もなかったし、数日生きていけるだけの金さえ手に入れればいいと思った。 が、盗んだ財布に入っていた免許証にはどうも見た事のある男の顔が。 初めこそ思い出せなかったが、コンビニでばったり会ってしまい完全に顔が一致する。 バイト先のバーに来ていたあの失恋リーマンだ。 まさかこんな事ってある? 『俺今財布無くして金欠だけど、また近々行くわ!』 なんて言われてしまったけど、ごめんリーマン。 今日話したの半分本当で半分嘘。名前も源氏名教えちゃったし、大学生でもない。 まじで許して。こんなばったり会うなんて思ってなかったからさ。 俺今日を生きるのに必死だから。どっかのタイミングで財布は交番届けとくから。 (あのリーマン、良い人そうだったな。目の事も心配してくれたし。失恋して落ち込んでたけど…きっと良い人生送って来たんだろうな…) ーーーそう。俺は、昔からクズで卑怯で虫けらで、クソみたいな人生を送っている。 だからきっと罰が当たったんだと思う。 ◇◇◇ 「はぁっ…はぁっ…‼︎」 人が賑わう街の中を人混みを掻き分けて全速力で走った。 「待てゴラァ‼︎」 「っ…くそッ」 狭い裏路地に逃げ込み、物陰に身を隠す。 息が切れて肺も痛い。見つからないように全身の感覚を研ぎ澄ませ息を殺した。 「どこ行きやがった」 「あっち見て来い」 追っ手の声が遠のいていく。ゆっくりと覗き込むと、男達は通りの向こうに走って行くのが見えた。 「ハハっ…はぁ…っぶねぇ」 まさか、“仕掛けた”相手がそっちの人だとは思わなかった。 金が無くて知り合い伝いで紹介された仕事。 コンビニ帰りに仲間と合流して、手筈通りに事は進んでいたはずだった。 簡単な受け子の仕事。 話を聞いた時から薄々やばい仕事だとは思ってたけど、相手は齢80の婆さんだと聞いて、仲間が大方話は進めてくれていたからあとは現金を受け取るだけだったのに、待ち合わせの場所に現れたのは強面の黒スーツを着た見るからにカタギじゃない男達。 なんでヤクザが?とは思ったが、ある有名なヤクザがこの街でシノギをやってるって聞いた事があったから、どこぞのチンピラにシマを荒らされてるのに気付いてシメに来たのかと思った。 「こう言うのは流石になぁ…」 これまで何度か死にかけた事はあるけど、ここまで心臓に悪い事はない。 「やっぱ条件良く飼ってくれる女見つけた方が俺には」 生き方として合ってるや。 なんて呑気に考えながら裏路地から出ようとした時だった。 「おにーさんっ」 「?」 振り向くと、いつの間にか背後にひとりの男が立っていた。 ほんとに気付かなかった。気配も何もなかった。 突然の事にまた心臓が跳ね上がる。 「え、俺?」 「そうそう。ちょっといい?」 この制服、警官だ。まずい。まさかさっきの通報されたか? いや、でも…そんなはずは… 「すみません、今急いでてーー」 にこりと笑う警官。なぜか背筋に悪寒が走る。 「ああ、大丈夫」 「…っ」 本能が逃げろと俺に告げた。背を向け逃げようと走り出そうとした時だった。 「時間はこっちで作るから」 警官がそう言った時、後頭部に強い衝撃が走る。 「がっーーー‼︎」 咄嗟に棍棒のようなもので頭を殴られたと理解した。 膝が崩れ落ち、全身の力が抜ける。前屈みに倒れ込んでしまい、意識が遠のく。 つか、こいつ警官…だよな? 「…んの…や…ろ…」 髪を掴まれ、霞む視界の中で右目に傷のある警官が笑った。 「ちょーっと、職質するだけだからねぇ」 ほんとに、俺の人生なんてクソだ。

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