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第27話:冗談ですよね?

冷たい視線が向けられる中、警官が呟いた言葉を理解するまで数秒かかった。 僕に飼われるかって、どういう事だ。俺の経験上、それはヒモになる事を示しているわけだがきっとそういう事じゃないはずだ。 「どうする?」 にこりと両目を閉じて微笑む警官。相変わらずその笑顔は不気味だ。 「……100、0で店…だろ」 ぽろっと口から出たのはそれ。 だって、こいつが飼い主になるなんて想像しただけで恐怖だ。 店でこき使われてた方が何倍もマシだろ。 「……ふぅん。わかった」 なぜか警官は面白くなさそうな顔をする。 「入江、この子お店の方取るって」 「まじ?」 そして、入江という男も驚いた顔を見せる。 大方俺の事をおもちゃにでもしたかったんだろうけど、こんな危ない警官に飼われるなんて冗談じゃない。 誰でも前者を取るはずだと自分の中で結論付けるが、一方で俺はなぜ二人がそんな驚いた反応を見せるのか分からなかった。 そして、どうして警官に続き入江という男もシャツを脱ぎ始めたのかも。 「じゃあしょうがないか。僕がやってもいいけど、どうする?」 「男相手はちょっとあれだけど、まぁどっちでも。任せる」 「ん〜。迷うなぁ」 訳のわからないやり取りが始まり、頭にハテナが浮かぶ。 やがて警官が入江という男に「初めは任せるよ」と笑いかけた後、俺の体を縛っていたロープ、そして手首と足首を縛っていたガムテープが外された。 「じゃ、自分で脱いで」 「へ?」 入江という男に見下ろされ、落とされた言葉に間抜けな声が出た。 「ぬ、脱ぐって…?」 目の前には両肩から腕にかけて入れ墨が入った巨体。 奥ではパイプ椅子に座りこちらの様子をニヤニヤと楽しそうに見ている警官。 「君が店がいいって言うならしょうがないよね。今から適正審査するから入江の言う通りやってね」 「は、え?店って…」 ちょっと待ってくれ。娯楽施設って、一体なんなんだ… 「ほら早く」 まさか俺はとんでもない場所で働かされようとしてる…? 「ちょっーーー‼︎」 その時、ビリ、とTシャツが破ける音が響く。俺がもたついてるのが気に食わなかったか入江という男にシャツを破かれた。心臓が嫌な音を立てる。 「痣すげえな」 「っ、」 数日前にボコられた痣だらけの俺の体が露わになり、両手で隠そうとしたが阻止された。 今から何をされるのか、やらされるのかを理解すると血の気が引くのがわかる。 「じょ、冗談っすよねこんなっ」 「嫌なら雅に飼ってもらう?」 「ひっ…‼︎」 首筋に舌を這わされ体が跳ねた。抵抗するにも力が強すぎてできない。 「最近さ、男の需要も増えてきたんだよね〜」 「あっ、い、やめッ…」 「だからまぁ、そっちで働いてくれるのはうちとしても有り難いんだけどさぁ」 「ひゃッ…ぁ、う…」 奥で警官の淡々とした声が聞こえる。警官はスマホを見ながら退屈そうにしていた。目の前でこんな事が起きてるのに平然とした態度を取る警官を横目に、恐怖と怒りが湧いてくる。 完全に、嵌められた。 「うっ…ぁ…」 体を舐めまわされて、怖いはずなのに気持ちよくて、こんな状況でいつ殺されるかもわからないのに俺の体は情けなくも反応してしまう。自分でも訳がわからない。 「あれ、元気になってんじゃん〜。さすが入江。テクニシャン」 「その言い方やめろ。つかこいつ才能あんじゃない?」 「え〜。いいなぁ。楽しそう」 「替わる?」 「まだいいや。もうちょっと」 覗き込んできた警官は楽しそうに笑って椅子に戻った。 男は警官の返事を聞くとため息をつき立ち上がる。 「舐めて」 「っ‼︎」 顔にズボン越しに股間を擦り付けられまた血の気が引く。 「ふざけ…」 ふざけんな、というつもりだった。 「っーーー‼︎」 言い切る前に、男の拳が俺の左頬を直撃し、口から飛び散った血が床に付着する。 「かはっ…」 脳がグラグラと揺れた。 視線をゆっくりと男の方へ戻すと、見下ろす冷たい視線が俺を刺す。 「拒否権ないから」 「はぁ…っ、は…」 馬鹿らしい二択だと思ったんだ。 「ほら、口」 「っ…ふ……」 でもこんなの…… 「ゔっ…ん…ぐ…っ…ンンッ」 死んだ方がマシなんじゃないか。

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