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第28話:いい子
腰を突かれ何度も喉の奥を擦られる度に、嗚咽と涙が溢れて視界がぐちゃぐちゃになる。
頭を手で固定されてるから逃げる事も出来ずに首を振るのが精一杯の抵抗だった。
「んッ、ゔ、ゔッ…ぇ…ゔぐ…」
「はー。下手過ぎ」
グッと俺の頭を掴む手に力が入る。殴られた頬と、後頭部がズキズキと痛む。
息が出来なくて、目の前がチカチカと暗転し出した時だった。
「ゲホっ、ゲホッ…ゔぇ…ッ…っ」
口から性器を引き抜かれ、肺が待ち焦がれた酸素を取り込もうとするが咳き込んでしまう。びちゃびちゃとだらしなく床に落ちる自分の唾液。
部屋の中には俺の咳き込む声と荒い息だけが静かに響いていた。
「次、下脱いで」
「っ…ご、ごめんなさ…」
今まで感じた事のない恐怖。体に触れられた時は俺自身もあんな反応していたのに、今はただ怖くて体を小さく丸めて少しでも守りの体勢を取る事しか出来ない。
顎が震え歯がガチガチと音を立てる。
見上げるのすら怖くてできない。目の前に立ちはだかる男の影があまりにも大きくて。
「お、おれ、ほんと…もう、悪い事、しませんから…っ、謝ります、からっ」
「はぁ。可哀想だけどそれじゃ雅が納得しないからさ」
「み、雅…さん…」
男のその一言で全てを悟る。
この場のボスは、あの警官なのだと。
「み、みや、び…さん…お願いします…っ」
「………」
奥でこの光景を観察している男。警官の方へ縋る思いで視線を送る。
「た、助けてください…っ、もう…許して、ください…っ」
警官は何も言わなかった。
必死に手を伸ばす俺をただじっと見つめるだけで、表情ひとつ変える事はなかった。
「あっーー」
警官の答えを待っていたのか、何も答えなかったのを確認した入江という男は俺のズボンに手をかける。
無惨にもズボンと下着を引っぺがされ、うつ伏せにされる。
「やっ、待っ…」
「こういうの初めて?今ローションないからちょっと痛いかも」
「い、いやだ…っ‼︎」
「暴れるともっと痛いって」
「っ‼︎あっ…‼︎」
みっともない格好で腕を押さえつけられ、自由を奪われた挙句に後ろに指を入れられる。
拒絶するように体に力が入り、そのせいで余計に痛みが増す。
「い、いや…だ…こんなっ…」
「言っとくけど優しい方だよ俺は」
「う、嘘だっ…ゔあっ…‼︎」
入れられた指でナカを擦られる。引き抜いて入れてを繰り返され何度も体がぞくりと震える。
「うちの店、お前みたいな奴ばっかだからすぐ馴染めると思うよ」
「あっ、ゔあ…い、…た…い…っぁ」
「結局お前みたいな奴って何回も繰り返すし。シマ荒らされて怒ってはないけどさ。ただ雅が大切にしてるもんに手を出した奴とそれを脅かす存在は例外で、償いとして“新しい人生”あげてんのね。あと、今回のは多めに見てる方だよ」
「あ、ぅ、ゔ…っ」
「聞いてる?」
「うあっ…‼︎」
それってつまりは全部ダメじゃん。
結局はシマ荒らされて怒ってるんじゃねぇか…っ
しかも、やっぱりヤクザなんじゃんか…
「あ、雅“は”ヤクザじゃないから」
「‼︎」
また考えを読まれたかと思えば、後ろに男の勃起した性器が当てがわれ、目を見開いてしまう。
「む、無理…ほんと無理っ」
「悪いけどこれできないと店じゃやってけないよ」
「み、店やめるっ、店やめますっ」
「はっ、今更?」
男に掘られるなんて絶対無理だ。娯楽施設…この時点でどんな事をやらされるか理解した。
スタッフ、ではなくキャストとして今みたいに男女問わず体を好きにされて、弄ばれるんだ。
一生、こんな事をこいつらが監視する中で生きていかなくちゃならないのか。
どうして。なんで俺は普通に生きられない。
それを諦めた結果がこれだなんて。
「助けてあげようか?」
息が早くなる中、部屋の奥からやっと口を開いた警官の声。
警官はこちらを見て目を細めて微笑んでいた。
「た、助けて…くれるのか?」
「うん」
お願いしますと懇願するしかなかった。これからの人生を想像するだけで死にたくなるほどだった。
やがて警官が男の肩を叩くと、男は俺から体を離した。警官がしゃがみ込み俺の頬に触れる。
「僕さ、ちょうど犬欲しかったんだけど」
「…っい、いぬ?」
「可愛がってあげるよ?どう?大事にするし」
「……っ」
また嵌められた。全部こうなるように仕向けられた。
結局俺に選択肢なんか最初っからなかったんだ。
「…お、お願い、します」
「いい子だね」
こんなの、頷くしかないじゃねぇか。
「ああでも、ちゃんと働いてはもらうから」
「…?」
そう言うと警官はズボンの後ろポケットからあるものを取り出した。
それは、俺があのリーマンから盗んだ財布。
「こういう技術って色々役に立ちそうだし。あ、この財布は預かるね」
「お、俺は何をすれば…」
「そうだな。それは追々話すよーーーあ、待って電話だ」
警官のスマホに着信が入った。明るい声で電話に出る警官を前に、俺はひとまず店に売られなくて済んだとホッと胸を撫で下ろした。
絶望には変わりないが。
俺はとんでもない奴に捕まってしまったのだ。
ここまできたら自分の人生を呪いたい。
「あ、もしもし松田?梅さんの財布見つかったよ〜」
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