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第3話

「千種先輩」 「三鷹。 どうした?」 聞き慣れた声に顔を上げると1つ下の後輩の三鷹駿が立っていた。 在学中から、千種先輩と懐いてきていた可愛い後輩。 いつも近くをチョロチョロしていて犬みたいだった。 その姿が実家で一緒に暮らしてた柴犬に似ていて、つい可愛がっていた。 式中も同じテーブルだったので話をしたが、昔と変わらず人懐っこい性格で可愛い。 そして、やっぱり柴犬に似ていると思う。 「隣、良いですか?」 「ん。 特別な」 「やった。 失礼します」 だからだろうか、少しだけ気が緩んでしまう。 「先輩なに飲んでるんですか? 美味しそう」 「かわらねぇな。 ほら、1口」 「ありがとうございます!」 強請り方もかわってない。 三鷹みたいに素直だったらなにかかわってたのだろうか…なんて、考えたって今はかわらない。 この思いは、伝えるべきではないのだから。 「しんどそうな顔してますよ。 なんで来たんですか。 そんな顔するなら……」 「え…、飲み過ぎたかな…。 つぅか、来るだろ。 “親友”の結婚式を見届けないなんて出来ねぇよ」 「親友……、ですか」 「親友だよ。 それ以外にあんのかよ」 「好きな人」 「……っ!!」 トーンを抑えた声に、慌てて三鷹を見る。 真っ直ぐに自分を見詰める目は犬ではなく、男のものだ。 「俺が、千種先輩が好きって言ったら意識してくれますか」 「は…、好きって……」 「好きです。 千種先輩が一ノ瀬先輩のことをそう思っているのと同じ意味です。 在学中からずっと、千種先輩のこと見てました。 だから、先輩が一ノ瀬先輩を好きなのも知ってます」 身体中が、カァッとなった。 バレていた? 在学中から? 自分のことはどうでも良い。 ただ、匠真にだけは嫌われたくない。 匠真を巻き込みたくない。 ホモからそういう目で見られていたなんて、匠真が言われたらどんな気持ちになるか。 新婦だってそうだ。 自分のせいで、仲が悪くなったら……。 匠真の未来がぐちゃぐちゃになる……。 駄目だ。 それだけは駄目。 こわい。 「誰かに…っ」 「言いませんよ。 そんな、先輩を傷付けるようなこと絶対にしません」 「……そ、う」

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