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ーー知希、黒田たちと遊んでから来るの?
5時限目の休み時間に桐人からきたメッセージ。
そういえば桐人は、この会話を全部スマホで進めてる。
すぐそこに、手を伸ばせば届く距離にいるのに。
喋ったら周りに聞かれる。
そうか、これは「ゲーム友達ってことにしておこう」の延長線上なのか。
…2人だけの秘密だ。
ーーーできればすぐ行きたいけど、邦貴に誘われてる。
その邦貴が他の友達と喋っている目を盗んで打ち込んだ。
ドキドキする。
ーースマホのバッテリーが死ぬとか言って帰るか?
おお、ナイスアイデア。さすが桐人。
邦貴がこっちを見る気配がしたから、さりげなく画面を脚に伏せた。
「なあ知希、放課後どこ行く?」
いつものように邦貴がオレの肩に腕を回して言う。
なんかやだ
「あー、ちょっとスマホの充電ヤバいから今日は帰るわ」
「えー? お前モバイルバッテリー持って来てねーの?」
「忘れちった」
至近距離で覗き込んでくる邦貴を、顎を引いて見返した。
「てか重たいよ、邦貴」
肩にかかっている邦貴の腕をやんわりと外す。
邦貴は不本意そうに腕を上げてオレを見た。
ちょうど6時限目のチャイムが鳴った。
好きな人ができると、それ以外の人に触られるの嫌になるんだな。
知らなかった。
だって初めて人を好きになったんだもん。知らないことばっかりだ。
桐人は、どうなのかな。
彼女とか、いたんじゃないかな。なにげにモテるみたいだし。
まあ、格好いいからね。優しいし。
訊きたいけど訊きたくない。
少なくとも今は、好きな子とかいなさそうだよね。
いたらオレになんか構ってないだろうし。
全力で落としにいきそうだもんな、桐人。
またチクリと胸が痛んだ。
手に持ったままだったスマホがブルっと震えた。机の下でこっそり画面を見る。
ーーここのスーパー寄ってくから、待ち合わせここでいい?
メッセージと一緒にマップが添付されていた。
今度は先生の目を盗んで返事を打つ。
ーーーうん。大丈夫。ここ知ってる。
6時限目はやたら長く感じた。黒板の上の時計は、壊れてるのかと思うほど動きが遅い。
早く終わってほしい。早く帰りたい。早く、早く。
早く桐人と2人になりたい
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