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さりげなく、知希の視線の先を窺う。
それ自体は今までもしていた事だけど、今はあの祭りの時の知希の表情が気になっている。
俺と黒田と浴衣の女子たちの方を見ていた知希の、少し陰った顔。なんであんな顔をしていたんだろう。
そう思いながら、あの日の浴衣女子が近くを通るたび知希を盗み見た。でも特に誰かに目を奪われたりはしていない。
浴衣が好きなのか? それともあの派手なメイク?
そういうの好きそうなタイプには思えないけど、人の好みなんて外から見ただけでは分からない。
結局分かんねぇんだよなぁ
そんな風に探りながら、知りたくないという気持ちもあった。
想いを寄せる相手の好きな人なんか判ったって苛立ちが募るだけだ。
でも気になる。
堂々巡りだ。同じ所をぐるぐる回っている。
どうしようもないな
斜め前の席の、小柄な背中を眺めた。板書を書き写している動きで、ごく薄い水色のシャツに肩甲骨が浮かび上がる。半袖から覗く、日に焼けてきたあまり太くない腕。
今日も朝から黒田はべたべたと知希に触っていた。
肩を抱いたり、頭を撫でたりする。
そのたびにイラッとした。これは慣れない。
ただ、以前より知希が黒田の腕から抜け出すのが早くなったような気がする。
まあ夏だし暑いからだろうけど。教室の空調なんてないよりマシなレベルだ。
要所だけメモを取りながら、またつい知希の方を見た。
カチカチとシャーペンの芯を出している。
あいつの手、すごいあったかかったな。
水で洗ったばっかりであの温度って、どんだけ体温高いんだよ。
そんな事を考えながら授業を聞いていた。
もうすぐ昼休みだ。昼は高橋が来る。
あいつ、ちょっと面倒くさい。
それに、
高橋は時々知希を睨む。別に知希は高橋に何もしていないのに。
相性が悪いだけか?
まあ、全然タイプが違うしな。
ただ、今まで高橋があんな風に他人を睨みつけるなんて事はなかったように思うから、少し気になった。
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