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そのうち飽きてしまうんだろうと思っていた夜のメッセージの交換。
でもその悲観的な予想に反して知希は今も毎晩送ってくる。祭りの日を境に、俺から先にメッセージを送る事も増えていた。
たいてい他愛もない話か、授業で聞き逃したところの確認。それをだらだらと寝るまで続ける。
最初はいつまで続けていいのか分からなくて戸惑った。でも段々、ずっと続けてもいいんだなと思えてきて、俺も遠慮なくメッセージを送るようになった。
翌日の弁当と朝食、そして今日の夕食。それらを考えながらスーパーの中を歩いていた。
先日は知希と来た店。俺の後ろを付いて歩く知希を思い出す。
あーあ。何も思いつかねぇ。てか弁当面倒くせぇ。
夏は傷みも気になるから、内容に気を遣う。
あ、そうだ。学食があるじゃん。
なんで思いつかなかったんだろう。
知希は弁当を持って来ない。パンが多いけど、たまに1人で学食に行ってる。
ダメもとだ。誘ってみよう。
夕食と朝食の分だけの買い物をして家に帰った。
ダメなら購買でも1人で学食でもどっちでもいい。
とにかく知希にメッセージを送ろう。
普段より早い時間だったけれど、構うものかとスマホを掴んだ。
ーー明日、学食行かない?
重くならないように気を付ける。
何十秒も経たないうちに返信がきた。
ーーー行く。
思わず見入った短い文面。たった2文字で心が躍る。
ーーじゃ、行こう。
そう送った指は、微かに震えていた。
その後『了解』という猫が親指を立てたスタンプが送られてきた。
なんだよもう 可愛いなぁ
まあ、何してたって可愛いんだけど
そんな事を思っていると今度は高橋からメッセージが届いた。ポップアップだけ見て、急がなくても良さそうだったから後回しにする事にした。
その後もポツリポツリと知希とメッセージのやり取りをしていて、途中でまた高橋からもきて、忘れていた事に気が付いた。
相変わらず別に大したことない内容なのにと思ったけれど、知希とのやり取りも大差ないと気付いて可笑しくなった。内容なんてどうでもいい。重要なのは相手だ。
明日、知希と俺が一緒に学食に向かったら、きっと黒田は怒るだろう。
知った事じゃねぇけど
相変わらず黒田は知希にベタベタと触るけれど、やっぱり最近は前よりも邪険にされているように見えた。
それを嘲うのは違うと解ってる。でも少しホッとしている自分がいるのも事実だ。
さっきから、もうスマホが鳴らない。時計を見ると深夜と言われる時刻になっていた。
知希、もう寝たな
『おやすみ』は送った事がない。それを送ると、もうその夜はおしまいになる気がするから。だから毎晩、スマホが鳴らなくなるまで起きている。元々睡眠が長くない方だから苦にはならない。
どんな顔して寝てんのかな、なんて考えた。
腕の中に抱いて眠れたらどんなに幸せだろう。
まあ、そんな日は来ないだろうけど。
ヘッドフォンを頭から外した。俺もそろそろ寝よう。
参考書をパタンと閉じて、スマホを手にベッドに向かった。
夢が自由に見られる薬とか、誰か開発してくんねぇかな。
そんな下らない事を考えながら眠りに落ちた。
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