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第4話
「はぁ…」
いきなり失恋してしまった。
妄想するのは勝手だけど、それは相手がフリーというのが前提にあって…
さすがに恋人がいる人に口説かれてるみたいだなんて、そんな図々しい妄想はできない。
すぐに忘れられるわけもないのに、妄想することすら許されないなんて、これから何を楽しみに生きていけばいいんだろう。
もうこの学校自体、辞めてしまいたい…。
そんなことを思っていたら。
「榛名先生、ため息ばっかりついてどうしちゃったんですか?寝癖のこと生徒に突っ込まれた?」
「あ、いや、すいません…なんでもないです」
隣の席の富永先生に心配された。
更にその隣の席の霧咲先生は、数学準備室かどこかに居るのか不在だ。
テストの後でもないのにこんな分かりやすいため息をついて、何でもないわけがないっていうのはバレバレだろうけど、相談するわけにはいかない。
失恋ごときで仕事を辞めたいなんて言おうものなら、どんな顔で呆れられてしまうか…。
あ、でも。
「あのぅ、富永先生は霧咲先生の大ファンなんですよね…?」
「え?はいっ」
ううん、良い返事すぎる。
笑顔がまぶしい…。
「…その、もし霧咲先生に恋人がいても、それは変わりませんか…?」
「え?」
はっ
お、俺は何を聞いているんだろう!?
富永先生自体が既婚者なのに、それを否定して霧咲先生が好きなんじゃないかみたいな言い方…!!
失礼すぎる!!
「す、すみません!!忘れてください!!」
「霧咲先生って恋人がいるんですか?」
まるで気にしていない、けろっとした声で逆に質問された。
「え?いや、その…昼休みに少し…耳にして…」
「もしかして榛名先生、それでため息を?やだ~、悩ましいですねっ」
「ちょ、違いますよ!?俺は富永先生がガッカリしないかなって…!いや、その…」
なんか今、口からとんでもない言い訳が勝手に飛び出たぞ。
「あれ?榛名先生って私のことが好きなんですか?残念ですけど私には夫と子供がいるんですよ~」
「わ、分かってますけど…その…!」
もはやどこから言い訳すればいいのか分からない。
でも、霧咲先生に恋慕していると勘違いされるよりかはマシかもしれない。
勘違いなんかじゃないけど…。
そして富永先生は完全に楽しんでいるけど。
「楽しそうですね、何の話をしているんですか?」
……え……
いつの間に戻ってきていたのか、俺と富永先生の背後には霧咲先生が立っていた。
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