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第6話
それでも日々は忙しく、あっという間に週末はやってきた。
えっと、今日の飲み会の場所はどこだっけ…開始時間もチェックしとかなきゃ…あと、何着ていこう…。
って、いつものスーツでいいか。帰ってきたら洗濯だな。
丸洗いできるスーツで良かった。毎回クリーニングに出すとお金かかるんだもんな。
そろそろ年齢的にも、ブランドもののスーツ買わなきゃって思うんだけど…。
ていうか学校に行くのに別にスーツじゃなくてもいいんだけど、私服だと毎朝考えるのが面倒くさいからスーツにしているだけだ。
飲み会の前に家に帰る時間もあるんだろうけど、めんどくさいからそのまま直行しよう。
俺はちゃんと鏡を見て寝癖が付いてないかチェックして、安物のスーツを着込んだ。
*
「おはようございます、榛名先生」
「お、おはようございます、霧咲先生…!」
今日も霧咲先生に挨拶された…!
って、俺の机の前を通らないと霧咲先生は自分の机に行けないから、当たり前と言えば当たり前なんだけど。いちいち喜ぶなよ、俺…。
「今日は一度家に帰るんですか?」
「え?あ、いえ、そのまま直行しようと思ってます。場所とかあんまりよく分からないので、早めに着いてた方が安心するかなって…」
「じゃあ、一緒に行きませんか?」
え……
ええええっ!!!?
「ダメですか?俺は場所が分かるので、よかったら」
「いや、ダメだなんて…!俺の方こそいいんですか?」
「こっちがお願いしてるんですから」
霧咲先生はくすくすと笑いながら、俺にそう言ってくれた。
やばい、嬉しすぎて顔が上げられない…。
俺絶対今、顔真っ赤だ。
身体が熱い…。
「じゃあ、そういうことでお願いします」
「は、はいっ!」
霧咲先生は自分の机に行き、俺も椅子に座るとふうーっと息を吐き出した。
すると、斜め後ろから妙な視線を感じた。
(………ん?)
振り返ると、そこにいたのは…
「良かったですねー、榛名先生」
「と、富永先生!?いつの間に来ていたんですか…!!」
「今ですよ、い・ま。お邪魔したらいけないと思ってコッソリと」
さっきまでの俺と霧咲先生とのやりとりを見ていたらしい富永先生は、ニヤニヤと笑っていた。
「あ、すいません。俺なんかが霧咲先生と一緒に行くことになって…」
「何で謝るんですか?私幹事組なので先に行ってますから~、それと…霧咲先生の方からお誘いしてたようですしね?」
霧咲先生ファンの富永先生を出しぬいたみたいになったからつい謝ってしまったけど、富永先生は全然気にしていないようだった。
それにしても、『良かったですね』って…。
もしかして富永先生、俺が霧咲先生のこと好きなことに気付いてるんじゃ…ないよな…。
もしそうだとしたら、恥ずかしくて死ねる!!
というか、その前に色々とヤバいじゃないか…。
「じゃあ、遅刻しないように来てくださいね」
「は、はい。それは勿論…!」
もしかして俺って分かりやすい、とか…?
いっそのこと俺も霧咲先生のファンです!って開き直った方がいいのかな。
別に嘘じゃないし。
そうしようかな…。
いや!さすがにそこまで堂々とはできない。
もし霧咲先生の耳に入ったら、男のファンだなんて気持ち悪いって嫌われるかもしれないし。
ああ…どうしよう…。
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