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第7話
「榛名先生、なんか元気なくねぇ?」
今日の一限目は、俺の受け持っている3年2組での授業。
教室に入って教卓の前に立った途端、堂島くんからそうツッコまれた。
「君の小テストの結果が悪いからだよ…堂島くん」
「ゲッ!マジかよ」
「数学と同じくらい、国語も頑張って欲しいんだけどなー…」
堂島くん、数学は得意な癖に国語はダメなんだよな…。
まあ、そういう男子って珍しくもないけど。
女子は逆パターンが多い。
そういうのは俺の学生時代から変わらないものだな…。
「でも榛名先生ホントに元気ないみたいですぅ。大丈夫ですかぁ?」
一番前の席の有坂さんに心配された。
間延びした喋り方をするけど、成績はとても優秀だ。
「それなら保健委員の私がおともしますがっ…!」
「い、いいよ若葉さん。ありがとうね」
生徒にまでこんなに心配かけるなんて、いけないいけない…。
「ほんとに大丈夫だから。じゃ、教科書の13ページを開いて…」
霧咲先生のことは、授業中には考えないようにしなきゃ。
*
そして、あっという間に放課後になった。
俺は部活の顧問は何もやってないから、放課後は特にすることは無い。
頼まれたらするかもしれないけど、運動経験とかないからなぁ…。
ちなみに中学教師をしているときは、かるた部の顧問だった。
別にかるたが得意ってわけじゃないけど、百人一首は全部言える。
この学校、かるた部ないからなぁ…。
「榛名先生、お待たせしました」
ドキンッ
甘い声が隣から聞こえて、見れば霧咲先生が出る準備をして立っていた。
俺も慌てて立ち上がった。
「あ、霧咲先生…!お疲れ様です、そういえば今日は部活動って…」
霧咲先生は確か、部活動の顧問をやっていた気がする。
今日の飲み会は確か7時半からだから、部活をしている先生達も来れるようにはなっているけど…。
「勝手に行うように言っておきました。将棋部の名ばかり顧問ですから。本気でやってるというよりも勉強の息抜きで来てる子達がほとんどですし」
「そうですか…」
「榛名先生、将棋は指せますか?」
「あ、いえ…前の学校ではかるた部の顧問をやってましたけど」
「かるた…というと百人一首ですか?凄いですね、さすが国語の先生ですね」
「いや、凄くは無いですよ…!将棋できる方が凄いと思います、俺全然分からないので…!」
「興味があれば、今度教えて差し上げますよ」
「本当ですか?」
あ…なんか今、初めて霧咲先生とすごく自然に話せてる気がする。
たとえ社交辞令でも、将棋を教えてくれるだなんて嬉しいな。
やっぱり霧咲先生って優しくてカッコいい…。
「勿論ですよ。…榛名先生?」
「あッすみません!ぼーっとしてました…!」
「ふふ、じゃあ行きましょうか」
ぼーっとしてたっていうか、ただ霧咲先生に見惚れてただけなんだけど。
俺たちは引き続き他愛のない会話をしながら、一緒に学校を後にした。
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