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第8話
俺達が宴会会場に着いたのは結構早い時間だったので、まだ幹事の人達しかいなかった。
会場は大きなお座敷で、長テーブルが三列縦に並んで、座布団が均等にズラリと敷かれている。
そして幹事の中の一人である冨永先生が、どこに座ろうかと悩んでいる俺達の存在に気付いて、こっちに来てくれた。
「霧咲先生と榛名先生、来るの早いですねー!会費はおひとり3500円で、場所はくじ引きです!」
「くじ引き…ですか。榛名先生と一緒に座りたかったんですけど………」
「………!と、隣になれるといいですね」
残念そうに言う霧咲先生の言葉がすごく嬉しくて、社交辞令だと分かっていても俺も返した。
そしたら霧咲先生はニッコリと笑ってくれて、思わず心臓が跳ねた。
ドキッ
(い、いきなりそんな笑顔は心臓に悪い!!)
「まあ、席が離れても後から会いに行くのでいいですけど。せっかく同じ学担になれたので、もっと榛名先生と仲良くなりたいんです」
「え!?……っ、お、俺も……です!」
「ふふ、良かった」
「…………!!」
早く宴会が始まらないだろうか。
それか、先にビールくらいくれないだろうか。
素面で好きな人とこんな会話を交わすなんて、本当に心臓に悪いから!!
………霧咲先生には俺が思うような他意はないこと、分かってるけど。
「はい、じゃあくじ引いてくださいね!」
「はい…」
*
結果。
俺はA列の一番後ろ。
霧咲先生は、B列の一番後ろ。
ということは………
「テーブルは違いますが、背中合わせに隣の席ですね。良かった、会いに行く手間が省けました」
「は、はい!そうですね……!!」
凄く嬉しかった。
女の先生がどんどん集まってくるかもしれないけど、これなら堂々と近くに座れる。
まあ、ちょっと席を外したらその間に席取られてしまいそうだけど………。
それでも、贅沢は言わない。
俺の今日の目標は、一度だけでも霧咲先生にお酌をすることなんだから………!!
もし席が遠くても霧咲先生は会いに来るって言ってくれたけど、それはきっと難しいだろう。
けど、俺から会いに行くなんてそんな大それたことはできないし。
じゃあやっぱりこれは凄いチャンスなわけで……
神様、ありがとう。
まあ、ここまで一緒に来れたってことがもう既に神様ありがとうなんだけど。
「お料理、楽しみですね。榛名先生、お酒は結構いけるほうですか?」
「まっ、まあまあ、人並程度ですかね…!」
お酌、できるかなぁ………。
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