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第9話

そして、段々と人が集まってきて……… 開始時間どおりに、新人歓迎会という名の宴会が始まった。 「カンパーイ!」 とりあえず最初は近くのテーブルの人達と乾杯。 そして後ろを向き、霧咲先生とも……… 「榛名先生、乾杯しましょう」 「か、乾杯……!」 カチリ、とビールの入ったグラス同士が軽く当たって音がした。 霧咲先生の顔を見ると、ニッコリ笑っていて…… けどその背後には、ビール瓶を持ち霧咲先生のコップが空になるのを今か今かと待ち構えた女性陣がギラついた目でこっちを見ていた。 「ヒッ……」 思わずそんな声を出して、霧咲先生から目を逸らしてしまった。 怖い、怖いよ女の先生達………!! 「……じゃあ榛名先生、また後で」 「は、はいっ」 とりあえずご飯を食べながら、同じテーブルの人達と会話をしよう、そうしよう。 けど、いつ霧咲先生にお酌できるかなあ……… * (……………) 「榛名先生!飲んでますかー!?」 「あっ、ハイッ!?」 宴会が始まり、暫く経ってから俺に声を掛けてきたのは富永先生だった。 俺は既に飲み物をビールから焼酎に変えて、ぼんやりと隅っこで一人で飲んでいた。 だって校長先生たちにお酌しに回ってたら、帰ってきた時はもう俺の席なかったんだもん…。 霧咲先生の周りは前後左右、女性陣。 あの恐ろしい布陣の中に、どうやって入っていけばいいというんだ。 時々霧咲先生のおこぼれに預かり、女性陣と楽しく話したいらしい若手の先生が混ざろうとしてたけど(勇者!)まったく相手にされず、すごすごと席に戻って行ってた。 本当に恐るべし、女性陣……… というか、 モテまくってる霧咲先生。 「…富永先生は霧咲先生のところには行かないんですか?」 一番のファンのはずなのに。 「わたし?私は普段から隣の席で仲良くさせて頂いてますから、こういう時は他の方にお譲りしないと後が面倒臭いですからね。他の先生たちの目もありますし……榛名先生は、少しは霧咲先生とお話できましたか?」 「……案の定です」 あれ、なんか俺酔っ払ってる? 素直に答えてしまった………。 「あは、そうですよね…、せっかく近くの席になれたのに残念でしたね」 「本当に……。でも俺にはあの人達を押し退けて霧咲先生に話しかけることなんてできませんから…」 いいや、もう。 どうせ富永先生も酔ってるんだから、明日には忘れてしまってるだろ………。 「霧咲先生もお優しいから、あの人達を無碍にはしないんですよね」 「本当に。俺みたいな地味な男にもすごくすごく優しくて……笑いかけてもくれて……」 それがそもそも夢みたいだったのかも。 現実の距離は、今のコレがきっと正しいんだ。

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