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第21話
童貞ですとか、
童貞ですとか、
えっと、他にも………?
もっと色々恥ずかしいこと言った気がするけど、思い出せない。
けど…
(恥ずかしい!!このまま死にたい!!)
そう思うのは変わらなくて。
でも、人様の家のトイレ(しかも霧咲先生宅)で自殺するわけにはいかないし。
そもそも全裸なのに、どうやって死ねって?
トイレットペーパーじゃ脆くて首も締めれないし。
トイレだけに、う○こと一緒に流れろと?
…流れたいよ!!俺だって!!
流れられるものならな!!
「あああぁぁぁ…」
再び頭を抱えて身体を小さくしていたら、突然背後のドアをノックされた。
コンコン!
「榛名先生、大丈夫ですか?」
「ヒッ!」
あ、なんか今喉の奥から変な声が出た…。
「………あの、驚かせてすみませんでした。着替えをドアの前に置いておくので、とりあえず着てくれませんか?そのままじゃ風邪を引きますから。…俺は、リビングに行ってますので」
「…………くしゅんっ」
あぁ、ほんと全裸だと寒い…。
でも、なんで死ねるほど寒くないんだろう。
今は春だからか。
冬だったらこのまま凍死できたのに。
けど、どっちにしろ人様のトイレで死ぬのは迷惑な話だよな…。
とりあえず、着替えよう。
…ガチャ
「………」
霧咲先生は俺に気を使ってくれてか、本当にドアの前にはいなかった。
俺は今までにない速さで昨日着ていたスーツを着て、染み込んだ酒と煙草の臭いに顔を顰めた。
同時に、本当に昨日のことは夢じゃなかったんだ…ということを再確認してしまった。
(…謝らなきゃ…)
霧咲先生に、沢山迷惑かけたこと。
男のくせに好きだなんて、抱いてくれだなんて…
「…………」
きっと、霧咲先生も酔っぱらってたんだ。
俺のコト、恋人か何かと勘違いして抱いてくれたんだ。
そうに決まってる。
じゃなきゃ、霧咲先生も俺のことを好きとか…
そんなの、ありえないから。
俺は一つ深呼吸をして、霧咲先生の待つリビングへと足を向けた。
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