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第27話

俺は身体をよじったり足をばたつかせたりしてなんとか抵抗するけど、堂島くんの方が身長も高くガタイもいいから全然抵抗になっていない気がする。 (誰か…廊下を通ってくれ…!!) いや、でも堂島くんは受験生なんだから、誰かが通りかかってもマズイか! こんなところを誰かに見られたら、彼の将来が…。 かと言って同意の上でもないし。 そしたら俺がクビになるだけで済むけど…ってそんな問題じゃないな! ここは……説得するしかないのか……。 というかそれ以外にない。 相手は見知らぬ相手じゃなくて俺の可愛い生徒だ。 落ち着いて…落ち着け、俺。 俺は一度身体の力を抜いて、深呼吸をした。 そして。 「堂島くん…落ち着きなさい、そして速やかに俺を離しなさい」 「いやだ…」 「やだじゃないよ。なんでこんなことを?今日は勉強を教わりに来たんじゃないのか?」 そう言ったら、堂島くんがムッと細く整えた眉を寄せた。 「そんなの、榛名先生と二人になりたいだけの口実に決まってんじゃん」 「え」 もしかして堂島くん、本気で俺のことを? ここまでされてなんだけど、俺はまだ自分が彼にからかわれているような気がしていたんだ。 「最初はこんなことするつもりなんかなかった、榛名先生が朝から元気ねぇからちょっと慰めたかっただけなんだけど。…でも、俺はずっと榛名先生のことが好きだったから…目の前でそんな無防備な顔見せられたらもう我慢なんてできねぇよ」 「………」 そんな。 そんな気持ちで慕われてたなんて、知らなかった。 やけに懐いてくれているなとは思ったけど。 でも…俺は堂島くんにそんな気持ちを抱いたことはない。 だって俺がこの学校に赴任してずっと焦がれていたのは、霧咲先生ただ一人だったんだから。 「榛名先生、好きだ…」 堂島くんの気持ちに応えることはできない。 けど断るにしても、なんて言えばいい? 受験生のガラスのメンタルを傷付けて受験を失敗でもさせたら、俺は一体どう責任を取れば…! ガタンッ 「ちょっ!?」 言葉を迷ってる内に、身体を持ち上げられて机の上に上半身を押し付けられた。そして、しゅるりとネクタイを上手に外されて、あれよあれよという内に両手首を頭の上で拘束されてしまった。 うわ、この状況はヤバい!マズイ! 言い訳できなくなる!! 「……堂島くん!こんなことがバレたら退学だぞ!君は自分の将来をめちゃくちゃにしたいのか!?」 俺も焦って、つい口調が普段よりもきつくなってしまった。 「んーなもん別にどうでもいいよ、俺の人生だし。それより今は榛名先生が欲しい」 はあぁ!? 「いや…いやいやマジメに考えようよ!!将来は大事だからね!!それにこんなことで高校退学になったりしたら、ご両親だって悲しむ…」 「榛名先生の方こそ俺の気持ち真面目に考えてくれよ!」 え………? 俺はまじめに考えて言ってるのに。 どういう意味だ? 「将来とか受験とか生徒とか、そういうこと絡めて俺のこと見ないで欲しい。ちゃんと、俺自身を見てよ。俺、榛名先生のこと好きなんだよ、ずっとずっと、好きだったんだよ」 「………」 堂島くんの顔は、せつなく歪んでいる。 国語教師の癖にボキャブラリーが貧相だってことは分かっているけど、他に形容しがたい表情だ。 そして俺はこの表情を、最近とても間近で見た覚えがあった。 (俺が部屋を飛び出した時の、霧咲先生と同じ…) 「榛名先生、一度でいいから俺のこと真剣に考えてくれよ…」 「ちょっ…!」 ブチブチッ! ワイシャツの前を無理矢理開けられ、反動でボタンがはじけ飛んだ。 「堂島くんやめろ!やめなさい!」 堂島くんは俺の言葉は無視してタンクトップを捲り上げる。 「ッ!?」 「堂島く…!?」 そして露わにされた俺の身体を見て、何故か堂島くんは一瞬顔をしかめた。

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