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第6話
頭がガンガンと響くように痛い。
昨日、あの教会で食事をとった後、コンビニで有り金のすべてを使って酒を買い込み、自宅に戻った。その晩のうちにすべてを飲み干し、ほとんど意識がない状態で、ベッドに入ったのだ。
ベッドの隣のサイドテーブルに置いた小さな時計を見れば、時刻はもう昼を回っていた。
――眠り過ぎたか……。
頭を動かすとまるで自分が鐘になって叩かれているような痛みが頭全体に広がり、その痛みにロイドは呻いた。
脳裏に昨日の記憶がぽつぽつと浮かんでくる。サディアスだとかいう奇妙な青年に会って、そしてその帰り道に見知らぬ教会で食事をとった。
あの教会の男によると、明日は死者の日だと言う。
サディアスは、明後日――つまり明日、自分の幸せのために祈ってほしいと言った。
なぜだ。
あの男自体が、死人か何かだったとか?
確かに、昨晩はハロウィンだった。死者たちがこちら側に戻ってくると言われる日。
鼻で笑った。すると途端に頭がずきりと痛んで、ロイドは唸りながら体を丸めた。
……馬鹿馬鹿しい。
ハロウィン? 死者が帰る? 死後の世界だ?
そんなものは、すべてこの世に生きる人間たちの妄想と、自己満足だ。
生憎俺にはそんな自己満足に浸る時間はない。
毎日が生きるだけで精いっぱいなんだ。
その日食べるものだって、今日はもうない。誰か知人に恵んでもらうか、ゴミをあさるか、誰かの分をくすねることで食いつなぐ毎日の中で、夢かうつつか分からないファンタジーに付き合っていられない。
――明日、お待ちしてますよ。一年に二日間だけ公開される特別な壁の隙間を見に来てください。
昨晩、去り際に教会の男はそう言って俺を送り出した。
教会に普段から足を運ばない自分だ。それが単なる壁の隙間を見るためだけに、わざわざ離れた場所の教会に行くはずがない。
それに今日は、このベッドから起き上がれそうにない。
頭に響く割れるような痛みに顔をしかめて、ロイドは再び眠りに落ちた。
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