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第7話

 再び起きたとき、時刻はすでに夕刻から夜になろうというところだった。  ベッドに上半身を起こしたロイドは、頭痛が消えていることに気がつき、ほっと胸を撫で下ろした。  今日の活動時間はほぼ終わってしまったが、それでもあと数時間は動けそうだ。  ベッドから抜け出し、今日のメシでも探しに行くかと着替えていたとき、昨日の教会の男の言葉がふと思い出された。  ……壁の、隙間か。  正直それほど興味がそそられるものではないが、もしかしたら昨晩のように何か食い物にありつけるかもしれない。  そういう気持ちが手伝って、ロイドは昨日帰ってきた道を再び辿ることにした。  昨晩と同じ道を歩いていると、ほどなくしてあの教会が見えてくる。遠目でも、地域住民とみられる者たちが出入りしているのが分かった。  その面々は、皆笑顔を浮かべていて、それら家族が教会の中に何組もいるのかと思うと、ロイドの足は重くなった。  やっぱり、帰るか……?  躊躇(ためら)っている自分に気がつき、臆病風に吹かれた自分を鼻で笑う。  俺があの教会に入れない理由なんてない。それに、ここまで来たら、その特別な壁の隙間とやらを拝んでやるのも悪くないじゃないか。  ロイドが教会の扉を押して中を見ると、思うほど人がいるわけではなかった。  教会の前方部、祭壇が置かれた内陣に向かって、カップルと思しき男女が並び、その後ろには幼い子供がいる家族連れが列を作っていた。  背後で教会の扉がゆっくりと閉まった時、前方にいた男がロイドの姿を認め、小さく微笑んだ。昨日の、ロイドに食事を与えた聖職者の男だ。  家族連れの後ろにロイドも並ぶ。  昨日はゆっくりと見て回る余裕はなかったから、その内部を物珍しく見渡せば、質素ながらも木材の柱など所々に装飾が施され、教会の天井に近いところの左右には、聖者をかたどったステンドグラスが配置されている。  そのステンドグラスを通過した夕暮れ時の弱い陽の光が、優しくも神秘的な光となって教会内を照らしていた。  思わず見惚れていたロイドの意識は、子供の甲高い泣き声で引き戻された。 「うわあん! あれ怖いよ!」  前に並んでいた子供が両親に縋りついている。  父は子供を抱き上げ、 「毎日神様に祈れば、地獄に行くことはないから、大丈夫だよ」  と言って子供の頭を撫でて宥めていた。  子供の母がロイドに申し訳なさそうに会釈し、家族はロイドの横を通り過ぎていく。  家族が教会から出ると、あの子供の泣き声も急に遠のいていった。  静かな教会に取り残され、二人きりとなった教会で、聖職者の男はロイドに微笑んだ。 「よく来ましたね。あなたに、これを見せたいと思っていたんです」  見れば、内陣奥の祭壇が手前側にずらされ、壁と祭壇との間に、人が通れるほどの間隔があいている。  聖職者の男は、その壁と祭壇の間に立って、壁の下部を掌で指し示していた。  

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