10 / 15

第10話

「ロイド」  サディアスの赤毛に近い明るい茶色の髪が、薄暗い電灯の光を浴びてきらきらと光る。  その真っ直ぐな双眸を向けられると、こちらがたじろぐほど美しかった。 「……どうしたんだ。なんで俺の家を知ってる」 「さっき、隣の地区の教会に入るところをちょうど見かけたんだ。それであの教会の神父さんにロイドのことを聞いたら、このマンションがロイドの家だと分かった」 「……俺に、何の用だ」  またしつこく祈ってくれと懇願されるのは面倒だと思った。ロイドは鍵を取り出し、家の鍵を開けながら、サディアスの目的を尋ねる。  サディアスは少し戸惑って俯き、何かを考えている様子だったが、 「昨日は突然、ごめん」  と呟いた。  突然だったのは、サディアスだって同じだっただろうに。  ロイドは下心があった昨晩のことを思い出して、歯切れ悪くああと頷いた。 「突然あんなことを言って、戸惑わせて悪かったと思っているんだ。だからその代わりに、きみの望みを叶えに来たんだ」  変な奴だと思った。盛って飛びつき、彼を戸惑わせたのは、むしろ自分の方だ。  だがロイドにとって、サディアスがどう考えているかは、大きな問題ではなかった。 「なんでもいいのか」  ロイドはにやりと口角を上げた。  昨晩はヤり損ねた。  言わば目の前に、食べ損ねたご馳走が用意されているようなものだ。  ロイドの試すような口ぶりに、サディアスの双眸が揺れる。そして恐る恐る頷いたサディアスの手首をロイドは取った。  鍵を開けた部屋に放りこむように入れて、玄関の扉を閉めるのと同時に、サディアスの体を玄関の壁に押しつける。  サディアスが身じろぐ間も与えず、ロイドはその顎を掴んで口づけた。  サディアスの唇を舌で割り、その舌に貪るように自身の舌を絡め、糸を引く唾液すらそのままに深くその口内を探った。 「う、ぁ……」  右脚をサディアスの両脚に割り入れて足を開かせ、ロイドはサディアスのジャンパーのチャックを下ろす。  サディアスが着ているTシャツの脇腹から手を差し入れ、 「なんでもって、こういうことだぞ。いいんだな?」  上がった息のまま問いかける。  サディアスも肩で息をし、その顔はすでに上気して熱に浮かされたようになっていた。 「……僕も、かつて、」  限られた呼吸の間に、息を整えながらサディアスは話し始めた。 「きみのようにやさぐれて、……心を、すり減らした時期があった」 「はあ?」  ロイドは胸を撫でる手を止めて、サディアスを見下ろした。  やさぐれている? 何を言い出すんだ、こいつは。 「――きみを救いたいんだ」  その入りこんでくるような強い視線に、ロイドは射抜かれたように一瞬怯み、たじろいだ。  しかし顔には出さず、小さく笑い飛ばして低く呟く。 「それがあんたの幸せを祈ることだって言いたいのか」 「ロイド……」  ロイドはサディアスの首筋に噛みつくように舌と歯を這わした。サディアスの上がる息と、熱くなる体温を感じる。  ロイドは、サディアスが着ていたジャンパーを脱がせ、その下のTシャツを首元までたくし上げた。

ともだちにシェアしよう!