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第10話
「ロイド」
サディアスの赤毛に近い明るい茶色の髪が、薄暗い電灯の光を浴びてきらきらと光る。
その真っ直ぐな双眸を向けられると、こちらがたじろぐほど美しかった。
「……どうしたんだ。なんで俺の家を知ってる」
「さっき、隣の地区の教会に入るところをちょうど見かけたんだ。それであの教会の神父さんにロイドのことを聞いたら、このマンションがロイドの家だと分かった」
「……俺に、何の用だ」
またしつこく祈ってくれと懇願されるのは面倒だと思った。ロイドは鍵を取り出し、家の鍵を開けながら、サディアスの目的を尋ねる。
サディアスは少し戸惑って俯き、何かを考えている様子だったが、
「昨日は突然、ごめん」
と呟いた。
突然だったのは、サディアスだって同じだっただろうに。
ロイドは下心があった昨晩のことを思い出して、歯切れ悪くああと頷いた。
「突然あんなことを言って、戸惑わせて悪かったと思っているんだ。だからその代わりに、きみの望みを叶えに来たんだ」
変な奴だと思った。盛って飛びつき、彼を戸惑わせたのは、むしろ自分の方だ。
だがロイドにとって、サディアスがどう考えているかは、大きな問題ではなかった。
「なんでもいいのか」
ロイドはにやりと口角を上げた。
昨晩はヤり損ねた。
言わば目の前に、食べ損ねたご馳走が用意されているようなものだ。
ロイドの試すような口ぶりに、サディアスの双眸が揺れる。そして恐る恐る頷いたサディアスの手首をロイドは取った。
鍵を開けた部屋に放りこむように入れて、玄関の扉を閉めるのと同時に、サディアスの体を玄関の壁に押しつける。
サディアスが身じろぐ間も与えず、ロイドはその顎を掴んで口づけた。
サディアスの唇を舌で割り、その舌に貪るように自身の舌を絡め、糸を引く唾液すらそのままに深くその口内を探った。
「う、ぁ……」
右脚をサディアスの両脚に割り入れて足を開かせ、ロイドはサディアスのジャンパーのチャックを下ろす。
サディアスが着ているTシャツの脇腹から手を差し入れ、
「なんでもって、こういうことだぞ。いいんだな?」
上がった息のまま問いかける。
サディアスも肩で息をし、その顔はすでに上気して熱に浮かされたようになっていた。
「……僕も、かつて、」
限られた呼吸の間に、息を整えながらサディアスは話し始めた。
「きみのようにやさぐれて、……心を、すり減らした時期があった」
「はあ?」
ロイドは胸を撫でる手を止めて、サディアスを見下ろした。
やさぐれている? 何を言い出すんだ、こいつは。
「――きみを救いたいんだ」
その入りこんでくるような強い視線に、ロイドは射抜かれたように一瞬怯み、たじろいだ。
しかし顔には出さず、小さく笑い飛ばして低く呟く。
「それがあんたの幸せを祈ることだって言いたいのか」
「ロイド……」
ロイドはサディアスの首筋に噛みつくように舌と歯を這わした。サディアスの上がる息と、熱くなる体温を感じる。
ロイドは、サディアスが着ていたジャンパーを脱がせ、その下のTシャツを首元までたくし上げた。
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